不動産売却の査定金額——高ければ本当に良いのか?

不動産を売却する際、多くの方がまず気になるのは「いくらで売れるのか」という査定金額です。複数の不動産会社に査定を依頼し、一番高い金額を提示してくれた会社にお願いしようと考える方も少なくありません。ですが、その「高い査定金額」、本当にそのままの価格で売れるのでしょうか?今回は、不動産の査定金額について冷静に考えてみたいと思います。
高査定=安心とは限らない
「うちはこの価格で売れます!」と高額な査定を出す不動産会社に出会うと、売主としては安心感や期待が高まります。ところが、その金額に根拠がなければ、いわば“絵に描いた餅”。いくら高い価格を提示されても、実際にその金額で購入希望者が現れなければ意味がありません。
不動産仲介の世界では、競争のために「高い査定を出してお客様に選んでもらおう」という考え方が根強くあります。つまり、売却活動に入ってから「この金額ではなかなか売れませんね」と徐々に価格を下げていく、という流れが生まれがちです。これでは結果的に売却期間が長引き、当初の希望とかけ離れた価格で売ることになってしまう可能性があります。
査定金額には理由が必要
そもそも、査定金額にはしっかりとした理由や根拠があるべきです。たとえば、近隣の成約事例、現在の販売事例、市場の動向、建物や土地の状況、日当たりや道路付けなどの個別要素……。こうしたデータをもとに、現実的に「このくらいなら売れる」という金額を算出するのが査定の役割です。
根拠のない高額査定では、結局売れずに価格の見直しを迫られるだけです。一方で、適正な価格であれば、購入を検討する方の目に留まりやすく、スムーズな売却につながります。
大事なのは「多くの人に受け入れられる価格」ではなく「一人に届く価格」
不動産の売却は、最終的に「一人の購入者」と出会うことがゴールです。多くの人にとって魅力的な価格である必要はありません。むしろ、「この価格なら買いたい」と思ってくれるたった一人に響く価格設定と、その価格を裏付けるプレゼンが重要です。
そのためには、ただ価格を提示するだけでなく、物件の魅力をどう伝えるか、どんな購入層にアプローチするかといった戦略も査定時に練り込む必要があります。価格、販売戦略、売却スケジュールが一体となって初めて、成功する売却が実現します。
売却のスケジュールに合った査定を
査定の際には、売主の希望スケジュールも大切な要素です。「できるだけ早く売りたい」「納得のいく価格でじっくり売りたい」など、希望は人それぞれです。スケジュールによって適正な価格や販売戦略も変わってきます。
例えば、早期売却が希望なら、相場価格より少し抑えた価格設定でスピード感を重視。一方で、時間に余裕があるなら、相場の上限価格を狙った販売活動を展開できます。このように、査定金額は売主の希望や状況に合わせたオーダーメイドであるべきなのです。
まとめ:冷静に「根拠のある査定金額」を見極めよう
不動産の査定金額は高ければ高いほど良い、というものではありません。根拠のない高額査定は、結局売却活動の停滞や価格の引き下げにつながり、売主にとって不利益になることもあります。
大切なのは、
✅ その金額で本当に売れる理由があるか?
✅ 購入希望者が「その価格なら買いたい」と思える価格か?
✅ 売却スケジュールや希望に合った戦略になっているか?
という視点で査定金額を見ることです。ぜひ、査定金額だけに惑わされず、冷静に内容や根拠を確認し、売却計画を立てていきましょう。
【本日の一曲】
Fujii Kaze / Hachikō