2026 09 21

64年前のSF作品が、今の時代に妙に刺さる -手塚治虫「2から2を消せば2」-

手塚治虫さんのYouTubeチャンネル「おさむーびー」で、1962年の作品『2から2を消せば2』を観ました。

1962年といえば、今から64年前。ちなみにビートルズがデビューした年でもあります。

そんな時代に描かれたSF作品なのですが、これが今のAI時代に観ると、妙にリアルで面白い。

まさに「これぞ手塚治虫」という感じの作品です。


人間の「替え玉」をつくる

物語の舞台は、2つのギャング組織が縄張り争いを繰り広げる未来の都会。

殺し屋に狙われているギャングの親分デッド・デキシイは、自分の身代わりとなるロボットを博士に作らせます。

一見すると、単純な「人間そっくりのロボット」の話。

ところが、そこには巧妙な伏線が張られていて、最後には少しゾッとするようなどんでん返しが待っています。

短い作品なのに、最後まで観ると「そういうことだったのか」となる。

このあたりの構成のうまさは、後の『ブラック・ジャック』などにも通じる、手塚作品ならではの魅力ですね。

そして何より面白いのが、人間と機械の立場が少しずつ曖昧になっていくところです。


「AIが人間を判断する」時代

そんな作品を観た直後、最近ニュースになった「AI上司が人間の解雇を勧告した」という話を思い出しました。

サンフランシスコの実験的な店舗で、AIエージェントが採用やシフト管理、勤怠管理などを担当し、ある従業員について解雇を勧告したというものです。

もちろん、ここには重要な前提があります。

AIが完全に自律して「あなたは今日でクビです」と判断したわけではありません。

人間が与えた指示や追加情報をもとにAIが判断し、その結果を人間が承認するという、人間とAIが組み合わさった仕組みでした。

つまり、まだ「AIが人間を支配する未来」という話ではありません。

でも、考えさせられるのはここからです。

これまでAIは「仕事を手伝ってくれるもの」でした。

メールを書いたり、資料を作ったり、データを分析したり。

ところが今は、その先にある「人を評価する」「仕事を割り当てる」「採用する」「解雇を勧告する」といった、権限を持つ側への利用が始まっています。

本当に怖いのは「AIが判断すること」なのか

個人的に興味深いと思ったのは、AIそのものよりも、人間との関係です。

AIが間違った判断をしたら、誰が責任を取るのか。

AIを作った会社なのか。

導入した会社なのか。

AIに指示を出した上司なのか。

それとも、AIの判断を承認した人なのか。

そして、もっと怖いのは、人間が「自分で判断する責任」をAIに預けてしまうことなのかもしれません。

「AIがそう判断しましたから」

そんな言葉が、いつか人間の責任逃れに使われるようになったら……。

そう考えると、64年前に手塚治虫さんが描いた「人間と機械の境界」というテーマが、急に現代の話に見えてきます。


不動産の世界も他人事ではない

もちろん、不動産業界も例外ではありません。

物件を探す。

価格を査定する。

住宅ローンを比較する。

市場データを分析する。

文章を書く。

問い合わせに対応する。

こうした仕事にも、すでにAIがどんどん入ってきています。

便利になる一方で、「AIがそう言ったから」という理由だけで、人の人生に関わる判断をしてしまうのは少し違う気もします。

家を買うことも、売ることも、住む場所を決めることも、単なる数字だけでは決められません。

最後に決めるのは、やっぱり人間。

AIにはAIの得意なことがあり、人間には人間にしかできないことがある。

64年前のSF作品を観ながら、そんなことを考えました。

技術はどんどん未来へ進んでいきます。

でも、未来をどう使うのかを決めるのは、結局人間なんですよね。


◻︎◻︎手塚治虫 2から2を消せば2
  https://tezukaosamu.net/jp/manga/325.html

  Forbus AI上司が「人間を解雇」、サンフランシスコで起きた世界初の事例
  https://forbesjapan.com/articles/detail/104220#google_vignette


【本日の一曲】
The Beatles – Love me Do

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