2025 06 30

【植物のある暮らし・いちじく編 vol.1 いよいよ、いちじくが熟してきました】

我が家の庭には、季節ごとにさまざまな果物が彩りを添えてくれます。春の梅、初夏の枇杷に続き、今、静かにその存在感を増してきているのが「いちじく」です。

いちじくの木は、庭の中でもちょっと奥まった場所にあり、ふだんはあまり目立たないのですが、夏が近づくと、緑の葉の間からふっくらとした実が顔をのぞかせるようになります。今年もその時期がやってきました。まだ熟しきっていない淡い紫色の実たちが、日ごとに色づきを深め、そろそろ収穫が楽しめそうな様子。先日は試しに一つ、ぷちっともいで味見をしてみました。甘みの中に少し青さが残っていて、「もうあと数日だな」と確信。

いちじくという果物には、どこか「静かな強さ」があるように思います。梅や枇杷のように花を咲かせてから実をつけるわけではなく、葉と同じタイミングでにょきっと実が現れて、そのまま成長していく姿は少し不思議です。しかも、その実のつき方もどこか奔放で、枝のあちらこちらにランダムにぽこぽことついている。そんな“自由奔放”な姿に、私は密かに親近感を抱いています。

いちじくの収穫のタイミングは、見た目と触感が頼りです。完熟すると、実がやや垂れ下がり、皮がやわらかくなってきます。朝、庭に出て指先でそっと触れてみると、「あ、これは今日だな」と分かる実がいくつかありました。その日の夕方、少し冷やしてから食卓に並べてみると、ねっとりとした甘さが口の中いっぱいに広がり、しあわせな気持ちに包まれました。

いちじくは、生で食べるのはもちろん、ジャムや赤ワイン煮にしても美味しい果物です。我が家では毎年、少し多めに採れた時にはジャムにして瓶詰めにしています。実の皮をむき、ざっくりと刻んで砂糖とレモン汁で煮詰めていくのですが、あの独特の香りが台所に広がると、「ああ、いちじくの季節が来たんだな」と実感します。保存食としても優秀で、冬の朝にヨーグルトに添えたり、パンに塗ったりすると、夏の記憶がよみがえってきます。

ところで、いちじくはとても栄養価の高い果物としても知られています。食物繊維やミネラル、ビタミンが豊富で、整腸作用や美容にも良いとされ、古くから“不老長寿の果実”と呼ばれてきたほど。そんなありがたい果物が、庭で勝手に(笑)実ってくれるなんて、本当にありがたい限りです。

今年のいちじくは、昨年よりもやや実が少なめのようですが、その分、一つひとつがしっかりと大きく育っています。春先の剪定がうまくいったのかもしれません。いちじくの剪定は、冬に大胆に枝を切り戻すのが基本なのですが、最初の年はどうしても「こんなに切って大丈夫なのかな……」と心配になりながらやっていました。でも、年々その加減も分かってきて、剪定も含めていちじくとの付き合いが深まってきた気がします。

朝、まだ気温が上がりきらないうちに庭に出て、いちじくの実をひとつ、またひとつ収穫して回る。その時に聞こえる鳥の声や、そよぐ風の音、足元の草の香り――すべてが穏やかな時間を演出してくれます。スーパーで果物を買うのとはまったく異なる「五感で味わう贅沢」が、そこにはあります。

これからの数週間が、いちじくの本格的な収穫期。ひとつずつ丁寧に収穫して、食べて、保存して、また誰かにおすそ分けして――そんな時間を、今年もゆっくりと楽しもうと思っています。

次回は、また別の植物のお話をお届けできればと思います。
それではまた、庭からの小さな報告でした。

【本日の一曲】
LE SSERAFIM / Kawaii (Prod. Gen Hoshino)