2025 07 28

二世帯住宅はアリ?ナシ?調査から見える“現代の家族のかたち”

「二世帯住宅って、実際どうなんだろう?」
家づくりや住宅取得を考えるなかで、一度は頭をよぎるこのテーマ。親世代との同居や実家の建て替えなどを機に、検討したことがあるという方も多いのではないでしょうか。

東京都のAlbaLinkが既婚者500人を対象に実施した「二世帯住宅に住みたくない理由に関する意識調査」の結果が公表されました。その結果から見えてきたのは、私たちが思っている以上に“気を使う同居”に対する慎重な姿勢です。


「二世帯住宅に住みたい」はわずか6.8%

調査によると、二世帯住宅に「住みたい」「すでに住んでいる」と答えた人はわずか6.8%
「条件によっては住みたい(28.8%)」を合わせても**35.6%と、過半数には届きませんでした。つまり6割以上の人が“住みたくない”**と答えているということです。

「住みたくない」理由のトップは、**「気を使う(32.6%)」**という回答。
次いで、「プライバシーが確保できない(24.2%)」「干渉されたくない(17.4%)」と続きます。家とは本来リラックスできる空間であるべきですが、その家で“他人(=親世代)に気を使う”という状況にストレスを感じている人が多いようです。

また、「親との関係が悪くなる(11.5%)」「生活リズムが違う(9.6%)」など、日常生活の中でのすれ違いや、家族関係への影響を懸念する声も見られました。中には「二世帯同居がきっかけで夫婦仲が悪くなり離婚に至った」というシビアな意見も寄せられており、単に“住むだけ”では済まされないリアルな問題が浮き彫りになっています。


それでもメリットはある。「家事・育児」「経済面」

一方で、「住みたい」と感じる理由としては、
1位が「家事育児が楽になる(20.0%)」、
2位「経済的メリットがある(9.6%)」、
3位「親の世話がしやすい(6.2%)」、
4位「安心できる(3.2%)」、
5位「ストレスが軽減できる(2.0%)」という結果でした。

子育て期や共働き世帯にとっては、親世代の手助けが得られることで生活の質が上がるという点が、やはり魅力として感じられているようです。また、建築費や生活費を家族で分担できることで、コストを抑えられるという経済面での利点も無視できません。


「間取り」が未来を分けるカギに

「じゃあどうすれば住みやすいのか?」
そのヒントになるのが、「二世帯住宅もアリだと思う条件」に関する回答です。

1位は圧倒的に「プライバシーを守れる間取り(69.2%)」。
具体的には、水回りやキッチンを別々にしたり、音が気にならないように防音構造を採用するなど、生活空間をしっかり分けることで「同居」だけど「距離感を保てる」設計が求められています。

続いて、2位「経済的援助がある(21.6%)」、3位「家事・育児を助けてもらえる(20.2%)」と続きます。やはり“助け合い”を前提とした柔軟な関係性と、実利が共存することが理想のようです。


「二世帯住宅」とひとくちに言っても…

実際には、二世帯住宅にもさまざまなパターンがあります。
「完全分離型」「一部共用型」「玄関だけ共用」など、家族構成やライフスタイルによって間取りや設計も十人十色。

とはいえ、一般的な一世帯住宅と比べるとどうしても特殊な間取りになることが多く、将来的に売却やリユースする際には難易度が高くなる傾向があります。「今は便利でも、将来的に誰が住むのか?」という視点も、設計段階から考えておく必要があります。


“距離”が生むやさしさ。「スープの冷めない距離」という選択肢

人と人の関係性が多様化している今、距離感の取り方も変化してきています。
「昔のように親と一緒に住む」のが当たり前ではなくなり、それぞれが独立した生活を大切にしたいと考える人が増えているのも事実です。

そうした中で、選択肢としてご提案したいのが、“別棟だけど近居”というスタイル。
たとえば、「実家の近くで中古住宅を安価に取得する」「子世代の家の近くに親世代が移り住む」など、**いわゆる“スープの冷めない距離”**を保ちながら、お互いの生活を尊重する暮らし方が、今の時代に合った答えなのかもしれません。

空き家が増える現状を背景に、すでにある住宅ストックをうまく活用すれば、経済的負担を軽減しつつ、精神的にも“ちょうどいい距離感”を保つことができるのではないかと。


最後に

二世帯住宅に対する意識は、「家族だからこそ、難しい」という現実を浮き彫りにしました。
家は暮らしの器であり、家族との関係を映し出す鏡でもあります。だからこそ、「一緒に住む」「近くに住む」「あえて離れて住む」——どの選択肢にも正解はなく、それぞれの家族が自分たちに合った距離感を見つけることが大切なのかもしれません。

設計や立地だけでなく、関係性も含めて考える二世帯住宅。
“住まい”の在り方は、これからも進化し続けるテーマです。

■■出典:新建ハウジング 「二世帯住宅に住みたくない」6割超、理由は「気を使う」
     https://www.s-housing.jp/archives/391910

【本日の一曲】
Medeski Martin & Wood / Philly Cheese Blunt