2025 08 18

住宅ローン利用時の自己資金の考え方 〜昔と今で何が変わったのか?〜

こんにちは。今回は、住宅購入を検討する方にとって大きなテーマである**「自己資金をどこにどの様に使うべきか?」**についてお話しします。
私がこの業界に入った頃(もう20数年ほど前になります)、自己資金の考え方は今とはずいぶん違いました。


昔の常識:「ローンは少しでも少なく!」

当時はこう言われていました。

  • 「住宅ローンの借入は1円でも少ない方がいい」
  • 「自己資金をしっかり貯めて、繰上げ返済を積極的に!」

なぜこう考えられていたのか?
理由は、金融リテラシーの低さと、投資の選択肢がなかったこと住宅ローンの金利が高かった からです。

今でこそ、NISAやiDeCoといった制度を利用して資産運用をすることは珍しくありません。しかし、当時はそうした制度は存在せず、一般的な家庭にとって「お金を運用する」という発想自体がありませんでした。

その結果、**「借金は悪、貯金は正義」**という価値観が当たり前。お金を増やす方法といえば、コツコツ貯金するか、ローンを繰上げ返済して利息を減らすことだけでした。

例えば、15〜20年前は固定金利で2.5〜3%、場合によっては3%超えの時代もありました。金利3%のローンで3000万円を35年借りた場合、総返済額は約4800万円にもなります。
「借金は悪、早く返すことが善」という価値観は、この数字を見れば納得ですよね。

繰上げ返済は最強の節約術でした。ローンを1年でも早く完済することが、貯金よりもリターンの大きい「最良の投資」だったのです。

この背景が、「ローンはできるだけ早く返す」=最大の節約術という常識を生んでいたのです。


時代の変化:超低金利時代の到来

しかし、時代は変わりました。
日銀の金融政策や景気対策により、住宅ローン金利は歴史的な低水準になっています。

  • 変動金利:0.3%〜0.5%台
  • 固定金利(35年):1.3%前後

これは世界的に見ても極めて低い水準です。

一方で、投資の世界を見るとどうでしょうか?
米国株や全世界株に連動するインデックス投資では、年平均4〜5%のリターンを見込むことができます。NISA(少額投資非課税制度)を利用すれば、運用益は非課税です。

つまり、
住宅ローン金利:1%前後
投資の期待利回り:4%前後

という構図になっています。


自己資金は使う?運用する?シミュレーションしてみよう

ここで、シンプルなシミュレーションをしてみます。

ケース1:自己資金を住宅ローン返済に充当

  • 借入金額:2000万円 (3000万円-1000万円)
  • 金利:1%(35年)
  • 毎月返済:約5.7万円
  • 1000万円を頭金として入れると借入額は2000万円に減り、総利息は約185万円お得 (総返済額は3556万円-2371万円で1185万円減ります)。

悪くない話ですよね。

ケース2:自己資金を運用に回す

  • 借入金額:3000万円頭金ゼロ
  • 自己資金1000万円年利4%運用
  • 毎月返済:約8.5万円
  • 35年複利運用で、約3950万円超に成長
    (※複利効果で雪だるま式に増える)

この場合、3000万円ローンの総返済額(3556万円)を超えた額に1000万円の運用額(3950万円)がなります。
35年という長期間で資金計画を考えていけるようなら、3000万円ローンを終えた後に3950万円が手元に残るケース2。

考え方にはよりますが、運用で増えていっている分、ケース2のインパクトはなかなかですよね。
「ローン金利1%」と「投資利回り4%」の差、たった3%ですが、時間を味方にすると大きな差になります。複利こそは人類の発明です。

■かなりレアケースかもしれませんが、現金のみで不動産を購入できるケースでも、あえて住宅ローンを組み、現金は運用し、住宅ローンの控除(減税)を受ける という考え方も有効だと考えます。

 ※話をわかりやすくする為、細かな部分をかなり省略してます。あしからず


投資を優先する場合の注意点

「じゃあ、みんな頭金ゼロでフルローンにして投資すればいいじゃないか!」
と思うかもしれませんが、そう単純ではありません。いくつかの注意点があります。

① 無理のない返済計画が大前提

銀行が融資してくれる金額=返せる金額ではありません。
毎月の返済は手取り収入の25%以内を目安にすることが大切です。
身の丈に合わない借入は、どんなに投資で増やしてもリスクになります。

② 投資は「余剰資金」でやること

投資には元本割れのリスクがあります。住宅ローンは確実に返さなければなりませんので、運用資金は「余裕資金」で行うことが鉄則です。

③ 精神的な安心感も大事

「借金があるのが不安で眠れない」というタイプの方には、この戦略は向きません。
金融的には合理的でも、心の安定を犠牲にしてまでやる価値はありません。


結論:自己資金は「どれだけ使うか」ではなく「どう活かすか」

昔の常識では、頭金をできるだけ入れてローンを減らし、繰上げ返済を積極的にすることが正解でした。
しかし、今の時代は**「超低金利」と「投資環境の変化」**により、
「自己資金を運用に回す」という選択肢が合理的になっているのです。

もちろん、万人に当てはまる答えはありません。

  • ローン返済に安心感を求める方は、頭金を入れて返済を軽くする
  • 資産形成を重視する方は、フルローンで運用を活用する

大切なのは、ライフプランとリスク許容度に合わせて戦略を立てることです。


まとめ

私自身、かつては「借金は悪、繰上げ返済こそ正義」と信じていました。
でも今は、数字と仕組みを理解すればするほど、「お金に働いてもらう」ことの大切さを感じています。

住宅購入は、人生で一番大きな買い物です。
だからこそ、昔の常識にとらわれず、時代に合ったお金の考え方を持つことが大切だと思います。

【本日の一曲】
Miso / Take Me