2025 08 22

家はどこでも建てられる? 香川県の都市計画と土地選びのリアル

「海が見える断崖絶壁に別荘を建てたい」「自然豊かな山奥でスローライフを送りたい」
そんな夢を抱く人は少なくありません。でも、ちょっと待ってください。日本では、土地さえあればどこにでも自由に家を建てられるわけではないんです。

実は、日本の土地利用にはしっかりとルールがあり、家を建てていい場所と建ててはいけない場所が決まっています。今回は、特に 香川県の特殊なケース を紹介しながら、家を建てる際に知っておきたい都市計画のポイントを解説します。


香川県は全国で唯一「線引き廃止」した県

まず最初に驚きの事実。
香川県は、日本で唯一 市街化区域と市街化調整区域の「線引き」を廃止した県 なんです。

「線引き」って何?

都市計画区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」に分ける制度を 区域区分制度 といいます。

  • 市街化区域:市街化を積極的に進めていくエリア(家や商業施設をどんどん建ててもOK)
  • 市街化調整区域:市街化を抑制するエリア(基本的に家は建てられません)

この仕組みは、日本中の都市計画で一般的に採用されていますが、香川県は2004年にこの制度を全廃。全県を「非線引き都市計画区域」にしたのです。

なぜ線引きをやめたの?

背景には ドーナツ化現象 があります。
線引き外の地域で無秩序な開発が進み、街の中心が空洞化する現象です。
また、県全体で都市計画の柔軟性を高め、土地利用を促進するために制度を廃止しました。

結果、香川県では他県よりも自由度が高く、土地の供給量が増えたことで 地価が全体的に下がった という特徴もあります。


「香川ならどこでも家が建てられる」はウソ?

ここで重要なのは、 線引きを廃止した=どこでも自由に家を建てられる というわけではない、ということです。

たとえば、海の見える断崖絶壁や、人里離れた山奥に家を建てる場合。
ロマンはありますが、次のような問題があります。

  • 建築基準法に基づく建築不可エリア
    崖地や土砂災害警戒区域では建築許可が下りないことがあります。
  • 道路に接していない土地
    建築基準法上、家を建てる土地は原則として幅4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければなりません。
  • インフラの問題
    電気・水道・下水道を引くための費用が莫大になることもあります。

つまり、土地の価格が安くても「家を建てられない土地」は確実に存在します。


日本の都市計画ルールを知ろう

そもそも、日本の都市計画は 効率的な土地利用 を目的に作られています。
人が住むエリアをある程度決めておかないと、インフラ整備や生活環境に大きなコストがかかってしまうからです。

大きく分けると、土地利用には次のようなルールがあります。

  • 都市計画区域:都市的な土地利用をするために計画された区域
  • 非都市計画区域:都市的な計画がない地域(山間部や農村など)

そして、都市計画区域内には 用途地域 という細かいルールが設定されています。


用途地域とは?13種類のエリア分類

都市計画区域内では、さらに 用途地域 によって建てられる建物の種類が決まっています。
全部で13種類あり、それぞれに特徴があります。

  • 第一種低層住居専用地域
  • 第二種低層住居専用地域
  • 第一種中高層住居専用地域
  • 第二種中高層住居専用地域
  • 第一種住居地域
  • 第二種住居地域
  • 準住居地域
  • 田園住居地域
  • 近隣商業地域
  • 商業地域
  • 準工業地域
  • 工業地域
  • 工業専用地域

例えば、 第一種低層住居専用地域 では、3階建て以上の建物や工場は基本NG。
反対に、 工業専用地域 では、住宅を建てることはできません。

つまり、 「家を建てられる地域」であっても、何を建てていいのかは用途地域によって制限される ということです。


香川県で家を建てるときの注意点

香川県は非線引き都市計画区域なので、他県と比べると柔軟ですが、次の点には注意が必要です。

  • 市街化調整区域がない=自由ではない
    建築基準法や用途地域はしっかり適用されます。
  • 農地転用が必要な場合がある
    田んぼや畑を宅地にするには農地転用許可が必要。
  • 風致地区や景観条例がある場合も
    景観を守るための制限がかかることがあります。

土地選びで失敗しないためのポイント

  • 建築可能かを必ず確認する
    不動産会社や市役所の都市計画課で確認できます。
  • インフラの有無を確認
    水道・下水・電気の引き込み費用を把握しましょう。
  • 将来の用途変更や価値も考える
    自分が住むだけでなく、将来売る可能性も考慮して選びましょう。

まとめ

  • 香川県は全国で唯一、線引き廃止で都市計画が柔軟な県
  • しかし「どこでも家を建てられる」わけではない
  • 用途地域や建築基準法の制限は必ずある
  • 土地を買う前に 「家を建てられるか」 を徹底的に確認すること

【本日の一曲】
大貫妙子 / 都会