【7月も住宅着工棟数マイナス】駆け込み反動減は続くが、本質的な需要不足では?

こんにちは、せとうち不動産です。
本日は、2025年7月の住宅着工統計について詳しく見ていきます。国土交通省が発表したデータによると、7月の新設住宅着工戸数は前年同月比9.7%減の6万1409戸となり、4カ月連続で減少となりました。
一見すると「減少続きで住宅市場は大丈夫?」と思われる方もいるかもしれません。しかし、背景をよく見ると、単なる「駆け込み需要の反動減」だけではない、もう一段深い問題が見えてきます。
◆ 7月の住宅着工の概要|減少幅は縮小するも4カ月連続のマイナス
7月の新設住宅着工は前年同月比9.7%減。
- 総戸数:6万1409戸
- 持ち家(注文住宅):1万7665戸(11.1%減)
- 貸家:2万7412戸(13.1%減)
- 分譲住宅:1万5886戸(1.7%減)
・マンション:5971戸(1.6%減)
・一戸建て:9709戸(2.7%減)
大きな特徴は、注文住宅や貸家の落ち込みが顕著である一方、分譲住宅の減少幅は小さいという点です。特にマンションの減少はわずか**1.6%**で、これは都市部の需要が一定程度底堅いことを示しています。
地域別では、
- 首都圏:5.8%減
- 中部圏:2.7%減
- 近畿圏:8.9%減
- その他地域:15.8%減
四国などの地方では、2桁減が続いており、都市部と地方の二極化が進んでいます。
◆ なぜ減少?最大の要因は「法改正の駆け込み需要」
今年4月に施行された改正建築物省エネ法により、新築住宅には省エネ基準への適合が義務化されました。
これを前に、3月に駆け込み着工が一気に増加し、その反動で4月以降は減少が続いています。実際、3月の着工数は前年同月比で約40%増という異常な伸びを記録しました。
7月の減少率は9.7%減で、前月までの2桁減よりはマイナス幅が縮小していますが、これは「底打ち」なのか、それとも「長期的な低迷の始まり」なのかが注目されます。
◆ 本質的な問題:本当に反動減だけなのか?
ここで大事なのは、今回の減少が「駆け込み需要の反動」だけではない可能性です。
現場でお客様と話していても、こういう声をよく聞きます。
- 「物価が高くて、家づくりの予算が厳しい」
- 「金利はまだ低いけど、先が読めないから様子を見ている」
- 「そもそも給料が上がらないのに、家を建てる余裕がない」
特に地方では、賃金上昇が都市部に比べて遅れており、物価高とのギャップが大きいのが実情です。
住宅は人生で最大の買い物ですから、少しでも不安要素があると「今はやめておこう」となるのは当然です。
◆ GX施工型住宅の補助金で一時回復?しかし“二重の先食い”問題も
今後、GX施工型住宅の補助金が適用される物件が着工される予定です。これにより、一時的に着工数は回復するかもしれません。
しかし、これは本質的な需要の増加ではなく、補助金による前倒しに過ぎません。
つまり、
- 3月に法改正前の駆け込み
- GX施工型住宅補助金狙いの駆け込み
この二重の先食いをしてしまうことで、年末から年始にかけての着工数は相当厳しくなる可能性があります。
◆ 今後の住宅市場はどうなる?
短期的には、秋にかけて補助金効果で多少の持ち直しがあるでしょう。
しかし、長期的には以下の課題が残ります。
- 人口減少による需要減
- 地方の所得停滞
- 賃貸市場の供給過多(貸家の13.1%減はこれを反映)
今後の住宅市場は、「量」から「質」へのシフトがさらに進むと思われます。
省エネ性能の高い住宅や、リフォーム・リノベーション需要に注目が集まる一方で、
「とりあえず新築を建てる」という時代は終わりつつあるのかもしれません。
◆ まとめ|住宅業界は“待つ”のではなく“変わる”時期に
7月の住宅着工減少は、確かに法改正による反動減が大きな要因です。
しかし、その裏には「そもそも住宅需要が減っている」という構造的な問題があります。
- 物価高と賃金格差
- 地方の需要縮小
- 補助金頼みの一時的な対策
これらを踏まえると、私たち住宅業界に求められるのは「新しい価値の提案」です。
- 省エネ+快適性を両立した家づくり
- 小さくても質の高い住宅
- 中古+リノベーションという選択肢
■■出典:国土交通省 建築着工統計調査報告(令和7年7月分)8/29付
https://www.mlit.go.jp/report/press/joho04_hh_001317.html
【本日の一曲】
Dre’es / Warm (feat. Lali Bi Baby)