星野源ジャパンツアー「MAD HOPE」京セラドーム大阪公演に行ってきました

先日、星野源さんのジャパンツアー「MAD HOPE」京セラドーム大阪公演に行ってきました。
野球観戦の習慣がない私は、ドームという空間そのものが久しぶり。前回足を運んだのは20数年前、東京ドームで観たU2の公演でした。あれから時間が経ち、初めての京セラドーム。あの独特の開放感、アリーナ特有の熱気、そして星野源さんを迎える期待感で胸が高鳴りました。
星野源という存在 ―「コア」と「マス」をつなぐ稀有な人
星野源さんは、音楽・俳優・文筆・ラジオ・コント……と、幅広いジャンルで活動するマルチなアーティストです。
NHKで番組を持ち、ラジオ番組で独自のトークを展開し、サマソニでも企画コーナーを担当。さらに演劇集団「大人計画」の一員(唯一の音楽部門)として舞台に関わるなど、その活躍は多岐にわたります。
一見、飄々として冗談交じりに語る姿が印象的ですが、その実、深い探求心と高い完成度へのこだわりを持つ人でもあります。ブラックミュージックに寄せた緻密な楽曲作りや変拍子を駆使するなど、実は高度なことをやっているにもかかわらず、決して「難しそう」に見せない。むしろポップで親しみやすい世界観に昇華してしまう。そのバランス感覚が、彼が唯一無二である理由のひとつだと感じます。
まさかの当選 ― 京セラドームへのチケット
今回のライブ、実はCD購入時に封入されていた追加公演抽選券で「なんとなく応募」した結果、見事当選!思いがけない幸運に恵まれ、京セラドームへの足取りも自然と軽くなりました。
開演前のBGMからして最高で、J DillaやMarcos Valleといったセンスの光る選曲。星野源さんのバックボーンを想起させるラインナップに、ライブ前から既に高揚感が高まります。
会場には、全身星野源グッズで身を固めた熱烈なファンから、年配の方まで、非常に幅広い客層が集まっていました。世代や趣味を越えて人々を惹きつける力は本当にすごいです。
ライブ本編 ― 音源忠実型の3時間
星野源さんのライブは、リリース音源をほぼそのまま演奏するスタイルが特徴。即興的な演出は控えめですが、その分、音源クオリティの高さを大規模空間で体感できるのが醍醐味です。
電子チケットのトラブルで開演が15分ほど遅れましたが、そんなことは気にならないほど、しっかり3時間のステージ。途中、ニセ明さんも登場し、ユーモアたっぷりのMCやパフォーマンスで会場を沸かせました。
星野源の音楽性 ― 「イエロー・ミュージック」という革新
星野源さんの音楽は、ブラックミュージック、J-POP、日本の歌謡曲、童謡、民謡など、あらゆる要素を巧みに融合した独自のジャンル「イエロー・ミュージック」として知られています。
- 複雑なコード進行やリズム構成
一聴すると親しみやすいメロディの裏に、緻密なコードやリズムが仕込まれている。例えば「不思議」のように、ポップスではあまり使われないコード進行を取り入れながらも、自然に耳に馴染む曲作りをしています。 - サウンド構築の多層性
「アイデア」では、生音のバンドサウンド→打ち込み→アコースティック弾き語り→再びバンドへ、という大胆な構成を取りながらも、聴く人を置いていかないポップ感を維持しています。 - 声の使い分け
地声とファルセットの切り替え、サビでのユニゾンなど、曲ごとに繊細な表現を重ねています。地声の温かさとファルセットの艶やかさ、その対比がとても魅力的です。
このように、複雑さと親しみやすさを同居させる技術は、まさに星野源さんならでは。ブラックミュージックをただコピーするのではなく、日本人に最適化して昇華させた結果、幅広い世代が楽しめる「星野源サウンド」が生まれたのだと思います。
俳優・文筆家としての顔
星野源さんの魅力は音楽だけにとどまりません。俳優としては、穏やかな人柄を活かした自然体の演技から、ひと癖ある役まで幅広くこなします。『逃げるは恥だが役に立つ』での好演は社会現象を巻き起こしましたし、舞台経験に裏打ちされた表現力は映画でも高く評価されています。
また、エッセイやコラムなど、文章の世界でも活躍。ユーモラスかつ観察眼の鋭い文体は、音楽同様に多くのファンを惹きつけています。
多方面で活動しながらも、決してどれか一つがおざなりにならないのがすごいところ。全方位に誠実で探求心を持ち続ける姿勢は、ファンとして本当に尊敬します。
京セラドームという空間で感じたもの
巨大なドームに集まった数万人が一体となって音楽を共有する時間は、やはり特別です。ステージ演出は派手すぎず、音楽そのものを聴かせる構成でしたが、その分、星野源さんの声と楽曲がダイレクトに響いてきました。
また、観客の雰囲気がとても良く、誰もが自分なりに楽しんでいる様子が印象的でした。全身グッズで武装した熱烈ファンがいれば、カップルや家族連れもいて、それぞれが星野源さんの音楽に何らかの思い出を持ち寄っている。その多層的なファン層こそが、星野源さんの「コア」と「マス」をつなぐ稀有な立ち位置を証明しているように思えました。
星野源のすごさを改めて考える
星野源さんが今なお第一線で活躍し、老若男女問わず支持される理由は何でしょうか。
それは「難しいことを難しそうに見せない」「実験をポップに昇華する」「多方面への好奇心を失わない」という姿勢にあると感じます。
- 音楽的には、緻密な構造と親しみやすさの両立
- 俳優としては、自然体の演技と役柄への深い理解
- 文筆家としては、日常を切り取るユーモアと観察眼
- ラジオやテレビでは、親しみやすいキャラクターで聴衆とつながる
この全てを高いレベルで実現しているからこそ、星野源さんは「マルチなアーティスト」ではなく「マルチでありながら一本筋が通った人」として特別視されるのでしょう。
「MAD HOPE」が教えてくれたこと
今回の京セラドーム大阪公演は、私にとって久しぶりの大規模ライブでしたが、星野源さんの世界観を改めて体感できる貴重な機会となりました。
音楽の楽しさ、探求心、そしてエンターテインメントとしての間口の広さ。どれもが「MAD HOPE」というタイトルに込められたメッセージと響き合っているように感じました。
ライブを終えて外に出ると、大阪の夜風が心地よく、胸の奥にまだ余韻が残っていました。星野源さんのライブは単なる音楽イベントではなく、自分自身の記憶や感情を引き出し、新しい気づきを与えてくれる体験です。
またぜひ、次のツアーでも参加したい。そう強く思わせてくれる素晴らしい公演でした。
【本日の一曲】
Marcos Valle – Estrelar