2025 10 10

AI歌手のニュースが話題に——「人間」か「AI」か、もうあまり関係ない時代へ

最近、AI歌手が登場したというニュースが話題になっています。数年前には考えられなかったようなレベルで、AIが人間の声や表現を再現するようになり、SNSやメディアでも「本当にこれAI?」と驚く声が多く聞かれます。
でも実際には、私たちの日常生活の中に、すでにたくさんのAIが溶け込んでいることにお気づきでしょうか。メールの返信、チャットでの問い合わせ、音声アシスタント、SNSの投稿作成支援など、私たちが人間だと思ってやり取りしている相手が、実はAIだったということはもう珍しくありません。

「相手が人間かAIか」より「目的が達成できるか」が重要に

インターネットを通じてのやりとりでは、相手が人間であるかAIであるかを気にする場面は、実はどんどん減っています。多くの場合、私たちが本当に気にしているのは「相手が人間かどうか」ではなく、「自分の目的が達成できるかどうか」なのです。

たとえば、ネットショッピングで問い合わせをしたとき、素早く正確な返答をしてくれるAIの方が、人間オペレーターより安心できることがあります。相手がAIか人間かより、欲しい情報がすぐに得られるか、問題が早く解決できるかのほうが重要なのです。

この流れは、教育やエンターテインメントの分野にも広がっています。

「寝ない」AIのメリット——いつでもどこでも利用できる便利さ

AIの大きな特徴は、「人間のように疲れたり寝たりしない」という点です。
たとえば、英会話のレッスンを受けたいとき、夜中でも早朝でも、AIであれば対応可能です。人間講師では難しい24時間対応も、AIなら問題ありません。しかも休憩も不要、料金も人件費がかからない分、安く提供されることが多い。

実際、AI講師による語学学習はすでに一部で始まっており、発音チェックや文法訂正などは人間以上に正確な場合があります。会話のテンポや学習内容も個人に合わせて調整してくれるので、自分のペースで無理なく学べる利点もあります。

数年後、YouTuberの多くはAIに?

そして今後数年のうちに、YouTuberやインフルエンサーといった分野でも、AIが人間に取って代わる可能性が高いといわれています。
現在でも、AIによって生成されたバーチャルYouTuber(VTuber)がすでに活動しており、フォロワー数十万人、数百万人という人気者も出てきています。AIは視聴者の好みを学習し、再生回数を増やすために最適なタイトルや内容を生成することも可能です。さらに、人間が撮影や編集にかける時間を大幅に削減できるので、効率面でも圧倒的に優れています。

この先、AIが「わざと失敗する」「合理的ではない行動をとる」など、人間らしさを演出するようになるでしょう。つまり、単に完璧なだけでなく、「ちょっとした抜け感」や「個性」までデザインされ、人間味のあるAIキャラクターが増えていくのです。

「死なない人間」が現れる?——AIが人格を再現する未来

AIが進化することで、人間の「死」という概念すら変わっていくかもしれません。
たとえば、過去の会話や映像、音声データをもとに、ある人の性格や話し方を学習したAIをつくれば、その人が亡くなった後でも「その人らしい」対話ができる可能性があります。

実際に数年前のNHK紅白歌合戦では、AI技術を使って美空ひばりさんがステージに「復活」しました。このように、故人の歌声や映像をAIが再現する事例は増えています。
こうなると、「人間は肉体的には死んでも、データとしては生き続ける」という世界が本当に訪れるかもしれません。

逆に価値が高まる「人間の肉体」を使った体験や娯楽

では、AIがあらゆることを代替できる時代に、人間は何に価値を見出すようになるのでしょうか?
その答えのひとつが、「人間の肉体を使った体験」や「リアルな場での交流」にあります。

AIがどれほど進化しても、現実の肉体を持つ人間同士のふれあいや、生身の身体で行うスポーツ・旅行・ライブなどの体験は、完全には代替できません。むしろ、AIが「なんでもできる」時代になるほど、人間の肉体を使った娯楽や遊びこそが「最先端の贅沢」になる可能性があります。

例えば、ライブコンサートやスポーツ観戦、旅行、アドベンチャーツーリズムなど、人間が五感で感じるリアルな体験がより特別な価値を持つようになるでしょう。AIの世界が仮想空間でどれほど発展しても、現実世界でしか味わえない「手触り」「匂い」「感触」は、人間ならではの財産として残ります。

AIと人間が共存する未来

AIが私たちの生活に深く入り込むこれからの時代、相手が人間かAIかを見極めることに意味は薄れていくでしょう。重要なのは「自分が求める体験や目的を達成できるかどうか」です。
そして、AIが便利さや効率性を提供してくれる一方で、人間は「リアルな体験」や「肉体を使った楽しみ」に価値を見出していくはずです。

AIがどれほど進化しても、人間の心や身体に宿る“リアル”は決して消えません。むしろ、AIが普及するほど、その価値は高まっていくでしょう。今、私たちが体感している変化は、その未来への入り口なのかもしれません。

◻︎◻︎出典:フォーブス ジャパン AI歌手「ザニア・モネ」が数億円のレコード契約を獲得、これが音楽の未来か?
     https://forbesjapan.com/articles/detail/82889

【本日の一曲】
Xania Monet – How Was I Supposed to Know?