懐かしの日本昔ばなし『姉川と妹川』
昭和50年代から平成初期に幼少期を過ごした方なら、一度は見たことがあるのではないでしょうか。
「まんが日本昔ばなし」。
毎週放送される30分番組の中で、日本各地に伝わる昔話や民話が紹介され、市原悦子さんと常田富士男さんによる独特の語り口が印象的な作品でした。
登場人物の声をほぼ二人だけで演じ分けるという今ではなかなか見られないスタイルでしたが、その語りがかえって物語の世界へ引き込んでくれました。
先日、日本昔ばなしの公式YouTubeチャンネルで新しい作品が公開されていたので見てみると、滋賀県に伝わる「姉川と妹川」というお話がありました。
姉妹の姫が川になる物語
舞台は琵琶湖の近く、伊吹山の谷あい。
そこには元気な姉妹の姫が暮らしていました。
しかし、その谷には川がありません。
水がないため村人たちは田んぼを作ることができず、粟やそばを育てながら慎ましく暮らしていました。
それでも村人たちは、どこの誰とも分からない姉妹の姫を大切にしていたそうです。
ある年のこと。
冬から続く長雨によって山の上には大きな池ができていました。
さらに雨は降り続き、山は限界まで水を抱え込んでしまいます。
このままでは山が崩れてしまう。
そう考えた姉妹は、池の水を逃がそうと池へ飛び込みました。
すると二人は美しい龍へと姿を変えます。
龍となった姉妹は大量の水とともに谷を一気に駆け下り、その流れた跡が川になりました。
やがて山は落ち着きを取り戻し、村には豊かな水がもたらされます。
その川のおかげで田んぼが作れるようになり、人々の暮らしも豊かになりました。
村人たちは感謝を込めて、その二つの川を「姉川」と「妹川」と呼ぶようになったそうです。
昔話は地域の歴史や自然を伝えている
昔話というと、子ども向けの物語と思われがちです。
しかし大人になって改めて見ると、地域の自然や地形、人々の暮らしが背景にあることに気付きます。
実際に日本各地には「なぜこの地名が付いたのか」「なぜこの川が流れているのか」を説明するような伝承が数多く残っています。
今回の「姉川と妹川」もその一つです。
もちろん実際に姫が龍になったわけではありません。
けれども、大雨によって山の水が流れ出し、川ができ、人々の暮らしが変わったという自然現象が、長い年月の中で物語として語り継がれてきたのかもしれません。
そう考えると、昔話は地域の歴史書のような役割も果たしているように感じます。
オープニングに隠された伏線
今回改めて見ていて面白いと思ったのが、物語の構成です。
冒頭に、姉妹の姫が水を飲んでいるシーンがあります。
子どもの頃は何気なく見ていましたが、最後まで見終わると、この場面が物語全体を象徴していることに気付きます。
水を飲む姉妹。お腹いっぱいになり、口から水を出す仕草。
物語で、大雨が降り地中に水を含みきれなくなった山が、崩れそうになり水を吐き出す様子。
その山の様子が冒頭の水を飲む姉妹の様子と重なるのです。
短い時間の作品でありながら、最初の場面が後の展開を暗示している。
こうした構成の巧みさは、大人になってから見るとより深く味わえます。
子ども向けの昔話だからといって単純な内容ではなく、限られた時間の中で起承転結がしっかり描かれているのです。
大人になって見る昔話も面白い
最近は動画配信サービスやYouTubeのおかげで、昔見ていた作品を気軽に見返せるようになりました。
子どもの頃には気付かなかった発見もたくさんあります。
物語の背景にある地域文化。
自然との向き合い方。
人々が大切にしてきた価値観。
そして、語り継がれる理由。
今回の「姉川と妹川」も、単なるファンタジーではなく、水のありがたさや、人々を守ろうとする優しさが描かれた物語でした。
昔話には派手な演出はありませんが、だからこそ心に残るものがあります。
もし最近見ていない方がいれば、久しぶりに日本昔ばなしを見てみてはいかがでしょうか。
子どもの頃とは違う視点で楽しめると思いますし、地域に伝わる物語の奥深さを改めて感じられるかもしれません。
◻︎◻︎まんが日本昔ばなし〜データベース〜 「姉川と妹川」
http://nihon.syoukoukai.com/modules/stories/index.php?lid=754
【本日の一曲】
haruka nakamura – 海辺の街と、スティルライフ
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