2026 07 05

香川県はなぜエンゲル係数が低いのか? 物価高の時代に見える「暮らしやすさ」の正体

最近、ニュースや新聞で「エンゲル係数」という言葉を見かける機会が増えました。
物価高が続く中で、家計に占める食費の割合が上がり、「食べるだけで精一杯」という感覚を持つ方も少なくないかもしれません。

そんな中で、少し気になるデータがあります。
香川県は、家計消費支出に占める食費の割合を示す「エンゲル係数」が、全国でも最も低い水準にある地域の一つだということです。

全国的にはエンゲル係数が上昇し、「生活のゆとり」が削られていると言われる今、なぜ香川県は比較的低い水準を保っているのか。
今回は、香川県のエンゲル係数の特徴と、その背景にある“香川らしい暮らし”について考えてみたいと思います。


エンゲル係数とは何か

エンゲル係数とは、家計の消費支出に占める食費の割合のことです。
たとえば、毎月の支出が30万円で、そのうち食費が7万5000円なら、エンゲル係数は25%になります。

一般的には、この数字が高いほど家計の中で食費の負担が大きく、逆に低いほど食費以外にもお金を回しやすい、つまり生活に余裕がある傾向があるとされています。

もちろん、単純に「低い=豊か」「高い=苦しい」と言い切れるものではありません。
ただ、全国的な傾向を見る上では、家計のゆとりを測る一つの分かりやすい指標です。


全国ではエンゲル係数が上昇中

近年、日本全体ではエンゲル係数が上昇しています。
背景にあるのは、やはり食料品価格の上昇です。

米や野菜、肉、乳製品など、日々の食卓に欠かせないものの値上がりが続いており、家計の中で「食べるためのお金」が占める割合が大きくなっています。
全国平均では25〜28%前後で推移してきましたが、足元ではさらに上昇し、家計の圧迫感は確実に強まっています。

実質賃金がプラスになったというニュースが出ても、「生活が楽になった感じはしない」と言われるのは、こうした食費の重みが増しているからでしょう。
食費は削りにくい支出なので、値上がりがそのまま生活の苦しさにつながりやすいのです。


その中で香川県は“低い県”

そんな中で、香川県は全国でもエンゲル係数が低い県として知られています。
統計によって順位は多少前後しますが、低い方の上位に入ることもある水準で、全国の中でもかなり優秀な部類です。

物価高の影響を受けながらも、比較的食費をコントロールできている地域と言えます。

では、なぜ香川県ではこの数字が低くなりやすいのでしょうか。


理由の一つは、やはり「うどん文化」

香川県といえば、まず思い浮かぶのはうどんです。
これは冗談ではなく、エンゲル係数を考える上でもかなり大きな要素だと思います。

香川のうどんは、単に「名物」ではありません。
日常の食事として完全に根付いていて、しかも安くて早くて満足感がある。
外食でありながら、家計に与える負担が小さいのです。

たとえば、昼食を毎回1000円前後のランチで済ませる地域と、500円程度でしっかり食べられるうどん店が身近にある地域とでは、年間で見た食費の差はかなり大きくなります。
香川県は、この「安くて満足度の高い食文化」が日常に組み込まれていることが、家計の食費負担を軽くしている面があるでしょう。

しかも、うどんだけで生活しているわけではなく、スーパーの惣菜や中食文化も含めて、“安く・おいしく・無理なく食べる”選択肢が多いのが香川の強みです。


共働き率の高さも見逃せない

もう一つの背景として挙げられるのが、共働き世帯の多さです。
世帯収入が安定していると、家計全体に占める食費の割合は相対的に下がりやすくなります。

エンゲル係数は「食費の金額」だけで決まるのではなく、家計全体の支出に対してどのくらいの割合かで決まる数字です。
そのため、収入や支出全体のバランスが整っている地域では、同じように食費がかかっていても係数は低く出やすいのです。

香川県は大都市圏ほど極端に物価が高いわけではなく、住宅費や通勤コストなども比較的抑えやすい面があります。
その中で共働きによる安定収入があると、家計全体に余裕が生まれ、食費の負担感も相対的に軽くなります。


低いエンゲル係数は「暮らしやすさ」の表れでもある

もちろん、エンゲル係数が低い理由は一つではありません。
ただ、香川県の数字を見ていると、単に「食費が安い」というよりも、暮らし全体のバランスが取りやすい地域なのだと感じます。

家賃や住宅取得費が都市部ほど高くない。
通勤時間が極端に長くなりにくい。
車社会ではあるものの、生活圏が比較的コンパクト。
そして、うどんに象徴されるような“安くて満足度の高い食文化”がある。

こうした積み重ねが、家計の中にちょっとした余白をつくっているのかもしれません。
食費が抑えられるということは、その分、子どもの教育費や趣味、住まい、旅行などにお金を回せる可能性があるということでもあります。


ただし、香川が無風というわけではない

とはいえ、香川県だけが物価高と無縁というわけではありません。
米や野菜、電気代、ガソリン代など、生活コスト全体が上がっているのは全国共通です。
今後さらに物価上昇が続けば、香川県でもエンゲル係数が上がっていく可能性は十分あります。

また、エンゲル係数は平均値なので、すべての家庭が同じように楽というわけでもありません。
子育て世帯、単身高齢者、収入が伸びにくい世帯など、それぞれ事情は異なります。

それでも、全国と比べたときに香川県の数字が低いというのは、この地域に「家計を守りやすい土台」があることを示しているように思います。


数字の先にある、香川らしい豊かさ

エンゲル係数というと、少し難しい経済用語に聞こえます。
でも、見方を変えれば「この地域で暮らすと、食べることにどれくらいお金がかかるのか」「暮らしにどれくらい余白があるのか」を映す鏡のような数字でもあります。

香川県は、全国的に見てもその数字が低い。
それは、単なる統計上の話ではなく、うどん文化、共働きのしやすさ、コンパクトな生活圏、そして日々の暮らしの工夫が積み重なった結果なのだと思います。

派手さはなくても、毎日の食卓が無理なく整い、家計にも極端な負担がかかりにくい。
そうした“暮らしの地力”のようなものが、香川県にはあるのかもしれません。

物価高の時代だからこそ、こうした数字の背景を見ていくと、香川県の暮らしやすさがまた少し違った角度から見えてきます。
「住む場所を考える」というのは、家の値段や広さだけでなく、毎日の食事や家計の回しやすさまで含めて考えることなのだと、改めて感じます。


◻︎◻︎Yahoo 物価高が続けば「食費30%(エンゲル係数)」が現実味 家計の「ゆとり」が消えていく
  https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c015f0ba44aaf91620b91ed57ffd3d1cfab9717d

  都道府県別統計とランキングで見る県民性 都道府県別エンゲル係数(2020年1月7日)
  https://todo-ran.com/t/kiji/18372


【本日の一曲】
Radiohead – Everything In Its Right Place

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