2026 07 04

「いらない土地」を国に引き取ってもらった後、どうなる? 相続土地国庫帰属制度の“その先”が動き始めました

相続した土地に困っている――。
そんな相談は、ここ数年で本当に増えました。

「実家の近くならまだしも、離れた場所の土地を相続した」
「草刈りや固定資産税だけが負担になっている」
「売ろうにも買い手がつかない」

地方では特に、こうした“使い道のない土地”の問題が深刻になっています。

そんな中、2023年にスタートしたのが**「相続土地国庫帰属制度」**です。これは、相続した不要な土地を一定の条件のもとで国に引き取ってもらえる制度。土地を手放す選択肢ができたという意味では、非常に大きな制度改正でした。

そして2026年6月、この制度の“次の課題”に対して新たな動きが出てきました。
それが、国が引き取った相続土地を、より売れやすくするために価格を大幅に下げて売却する仕組みです。


国が引き取った土地、実は売れていなかった

相続土地国庫帰属制度によって、国に引き取られる土地は今後も増えていくと見られています。実際、全国の財務局が管理する相続土地は、2025年度末で1586か所。前年より600か所以上増えました。

ただ、問題はその先です。

国が引き取った土地は、これまで一般競争入札で買い手を募集してきましたが、宅地などの売却実績はほぼゼロ
つまり、「相続人が持ちたくない土地」は、国が持ってもなお売れないケースが多いという現実が見えてきたわけです。

特に地方の土地は、

  • 面積が中途半端
  • 接道条件が弱い
  • 傾斜地や変形地で使いにくい
  • 周辺人口が減っていて需要が薄い

といった事情を抱えていることが少なくありません。
結果として、国が引き取っても管理コストばかりがかかってしまう状況になっていました。


新たな方針は「最大93%引き」

そこで財務省が打ち出したのが、売れ残る相続土地の価格を段階的に下げる新ルールです。

内容を簡単にいうと、

  • まず評価額を3割程度引き下げる
  • それでも売れなければ、3か月ごとに1割ずつ減額
  • 最終的には当初評価額の7%まで下げる
    → つまり最大93%オフ

というものです。

さらに、売却方法も見直されます。
これまでは入札が中心でしたが、今後は一定条件のもとで随意契約も可能にする方針です。隣地所有者など「この土地なら使い道がある」という人に対して、より柔軟に売却しやすくなります。

また、売却時には**測量や地下埋設物調査を行わない「現状有姿売買」**も採用される見込みです。これは、土地を“今ある状態のまま”引き渡す方法で、国側のコストを抑えながら売却を進める狙いがあります。


そもそも「相続土地国庫帰属制度」とは?

ここで改めて制度の基本も整理しておきます。

相続土地国庫帰属制度とは、相続や遺贈によって取得した土地について、一定の条件を満たせば国に引き取ってもらえる制度です。2023年4月に始まりました。

ただし、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではありません。例えば、

  • 建物が建っている土地
  • 境界が不明確な土地
  • 土壌汚染や埋設物がある土地
  • 崖地など管理に大きな負担がかかる土地

などは対象外になる可能性があります。

また、申請すれば終わりではなく、

  • 審査手数料
  • 負担金(原則として10年分の管理費相当)

も必要です。

つまりこの制度は、「不要な土地を無料で国に押し付ける仕組み」ではなく、一定の条件をクリアしたうえで、管理負担をお金と引き換えに整理する制度と考えた方が実態に近いです。


地方の土地問題は「売れないこと」が本質

今回のニュースで感じるのは、やはり地方不動産の難しさです。

インフレで全国的に地価が上がっている、といったニュースを見ると、「土地は持っていれば価値が上がる」と思われがちです。ですが実際には、地方ではそう単純ではありません。

香川県でも高松市中心部のように再開発や商業集積で需要があるエリアは別として、郊外や人口減少が進む地域では、
“タダでもいらない土地”が現実に存在する時代になっています。

相続の現場では、「親から受け継ぐものだから大切にしたい」という気持ちと、「でも維持できない」という現実がぶつかります。
その結果、名義変更が後回しになったり、管理されないまま放置されたりして、空き家や所有者不明土地の問題につながっていくのです。


いちばん大切なのは「相続してから考える」ではなく「相続前から整理する」こと

相続土地国庫帰属制度は、たしかに大きな前進です。
ただ、制度ができたからといって、すべての土地問題が解決するわけではありません。

  • その土地は本当に売れないのか
  • 隣地所有者や近隣に需要はないのか
  • 駐車場や資材置場など別の活用はできないか
  • 建物を解体するべきか、そのまま売るべきか
  • 相続人同士で方針をどうそろえるか

こうした整理は、やはり早い段階で考えておくことが重要です。

相続は「起きてから」ではなく、「起きる前」に準備した人ほど選択肢が増えます。
売る・貸す・残す・手放す。どれが正解かは土地ごとに違いますが、共通して言えるのは、放置がいちばん選択肢を減らすということです。

不要な土地の扱いに悩んでいる方、あるいは将来の相続が気になっている方は、ぜひ一度、早めに状況を整理してみてください。
地方の土地こそ、「今はまだ大丈夫」が一番危ないのかもしれません。


◻︎◻︎共同通信 財務省、国の相続土地売買を促進 評価額最大93%引き下げ
  https://news.yahoo.co.jp/articles/97693bbd60efd75573d9f27ffe959bfa605835f9

  政府広報オンライン 相続した土地を手放したいときの「相続土地国庫帰属制度」
  https://www.gov-online.go.jp/article/202303/entry-10064.html


【本日の一曲】
Strawberry Switchblade – Trees and Flowers 

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