2026 07 28

なぜ日本の家では靴を脱ぐの? 世界の住まいを比べると見えてくる建物づくりの違い

家づくりを考えるとき、間取りやデザイン、断熱性能などに目が向きがちですが、実はそれ以前に大きな違いがあります。

それは**「家の中で靴を脱ぐのか、それとも履いたまま生活するのか」**ということです。

普段は当たり前すぎて意識しませんが、この違いは住宅の設計や使い方を大きく左右しています。今回は、世界の住まいを比べながら「靴を脱ぐ文化」について考えてみたいと思います。


世界では靴を履いたまま生活する国も多い

日本では家に入ると玄関で靴を脱ぐのが当たり前です。

しかし、海外では靴を履いたまま生活する地域も少なくありません。

例えば欧米では、玄関からリビングまでそのまま靴で歩く住宅も多く見られます。もちろん家庭によって違いはありますが、「靴を脱ぐこと」が絶対的なルールではありません。

一方、日本だけでなく韓国や台湾など、アジアには靴を脱ぐ文化が根付いている地域もあります。

つまり、「家の中で靴を脱ぐ」という行為は世界共通ではなく、その土地の歴史や文化、気候によって育まれてきた生活様式なのです。


建物の設計は「靴を脱ぐかどうか」で大きく変わる

住宅を設計する立場から見ると、この違いは非常に大きなポイントです。

日本の住宅には必ずと言っていいほど**玄関(土間)**があります。

外と内を区切る段差があり、そこで靴を脱いで室内へ上がります。

この段差があることで、

  • 外の土や砂を持ち込まない
  • 雨の日でも室内が汚れにくい
  • 床を清潔に保ちやすい

というメリットがあります。

反対に、靴を履いたまま生活する住宅では、玄関に大きな段差がないことも多く、床材も土足で歩くことを前提に選ばれています。

つまり、「靴を脱ぐ」という生活習慣そのものが住宅設計の基本条件になっているのです。


気候も大きく関係している

靴を脱ぐ文化には、気候も深く関係しています。

日本は四季があり、雨も多く湿度も高い国です。

もし雨の日に靴のまま家へ入れば、床はすぐに濡れ、泥や砂も持ち込んでしまいます。

さらに昔の日本家屋は畳が中心でした。

畳は素足で過ごすことを前提とした床材なので、靴のまま歩けば傷みや汚れの原因になります。

こうした気候や建材の特徴が、「家では靴を脱ぐ」という文化を自然に育ててきたのでしょう。


店舗では日本でも土足が当たり前

一方で、日本でも建物の用途が変われば事情は異なります。

スーパーやコンビニ、ショッピングモール、オフィスなど、多くの建物では靴を履いたまま利用します。

最近では飲食店でも土足のまま利用できる店舗が増えています。

つまり、日本でも用途によって設計の考え方が変わるということです。

住宅は「くつろぐ場所」。

店舗は「多くの人が利用する場所」。

同じ建物でも目的が違えば、設計も大きく変わるのです。


武道場は今でも「裸足」が基本

面白いのは武道です。

柔道や空手、合気道などは、基本的に建物の中で靴を履きません。

道場へ入る前に靴を脱ぎ、裸足で稽古を行います。

これは単なる伝統ではなく、安全面や礼儀、床を大切に扱うという考え方も含まれています。

住宅とは目的が違いますが、「靴を脱ぐこと」を前提に空間が設計されているという点では共通しています。


当たり前を疑うと建物の面白さが見えてくる

普段は何気なく靴を脱いで家へ入っていますが、世界を見渡すと、それが決して当たり前ではないことがわかります。

文化や気候、建築材料、暮らし方の違いが積み重なり、それぞれの国の住宅が形づくられているのです。

家づくりでは、間取りや設備に注目しがちですが、その根底には「どう暮らすか」という生活文化があります。

玄関の段差、土間、畳、スリッパ、床材の選び方まで、実はすべて「靴を脱ぐ文化」とつながっています。

こうして考えてみると、建築とは単に建物を造ることではなく、その国や地域の生活そのものを形にしたものだと言えるのかもしれません。

普段何気なく行っている「靴を脱ぐ」という行動も、世界の住まいと比べてみると、とても興味深い建築文化の一つなのです。


◻︎◻︎LIFULL HOME’S 靴を脱ぐのは日本だけ? 玄関の歴史としつらえ
  https://www.homes.co.jp/cont/press/reform/reform_00359/


【本日の一曲】
Cheryl Lynn – Encore (Extended Version)

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