【夏休み特集④】砂浜が消えていく? 2100年には6割以上が失われるかもしれない「砂浜の未来」
夏になると、海水浴場へ出かける方も多いと思います。
青い海、白い砂浜、波の音。日本では昔から「夏の風景」として当たり前のように存在してきた砂浜ですが、実は今、その砂浜が全国的に少しずつ減っています。
そして、このまま状況が進めば、2100年には日本の砂浜の6割以上が失われるおそれがあるとも予測されています。
「砂浜がなくなる」と聞くと、単に海水浴場が減るだけのように思えます。しかし、砂浜には観光資源だけではない、とても重要な役割があります。
今回は、身近な「砂浜」から、地球環境や私たちの暮らしについて考えてみたいと思います。
砂浜は実際にどれくらい減っている?
日本では砂浜の減少が長期的に進んでいます。
全国の砂浜の幅は、1950年ごろには平均約66mあったのに対し、1990年ごろには約43mまで減少したとされています。
わずか40年ほどで、平均20m以上も砂浜が狭くなったことになります。
そしてさらに、このまま砂浜の減少が続けば、2100年には1990年と比べて6割以上の砂浜が消失する可能性が指摘されています。
実際に、全国各地では砂浜が痩せてしまい、海水浴場を開設できなくなった場所もあります。
晴れていて海はきれいなのに、砂浜には「立入禁止」「危険!およがないで!」という看板が立っている。
そんな光景が、すでに現実になっているのです。
そもそも砂浜の砂はどこから来る?
では、砂浜の砂は一体どこからやってくるのでしょうか。
実は、その多くは山からやってきます。
山に雨が降る
↓
土砂が削られる
↓
川へ流れ込む
↓
川を下って海へ運ばれる
↓
砂が海岸にたまる
この繰り返しによって、砂浜は維持されています。
ところが現在、この「山から海へ砂を運ぶ仕組み」が変化しています。
ダムや都市化が砂の流れを変えた
その大きな原因の一つがダムです。
ダムによって水をせき止めると、これまで川を流れて海まで届いていた土砂も途中でせき止められます。その結果、砂はダムの底にたまり、海岸へ届きにくくなります。
さらに都市化も影響します。
昔は土がむき出しだった場所が、道路や建物、舗装された土地へ変わることで、雨が降っても土砂が川へ流れ込みにくくなります。
つまり、砂浜から砂が流れ出ているのに、新しい砂が十分に補給されなくなっているわけです。
さらに気候変動も追い打ちをかける
そこへ加わっているのが気候変動です。
大型化した台風などによって波が強くなると、海岸の砂がより多く海へ持ち去られる可能性があります。
「山から来る砂は減る」
「海から砂は持っていかれる」
この両方が重なることで、砂浜はどんどん痩せてしまいます。
さらに海面上昇や風の変化など、気候変動によるさまざまな要素が組み合わさることで、海岸侵食が加速する地域もあるとされています。
砂浜は「海水浴場」だけではない
砂浜が失われると困るのは、海水浴場や観光地だけではありません。
砂浜には、波の力を弱める防災機能があります。
海から押し寄せる波は、砂浜で徐々にエネルギーを失います。
ところが砂浜がなくなれば、より強い波が海岸近くまで届きやすくなります。
実際、神奈川県の茅ヶ崎海岸では、砂浜の後退が進んだ地域で、2019年の大型台風によって海岸沿いのサイクリングロードが大きな被害を受けました。
砂浜は、私たちの暮らしを守る「自然の防波堤」のような役割も持っているのです。
「沿岸スクイーズ」という問題
さらに興味深い言葉があります。
それが『沿岸スクイーズ』です。
これは、海側からは海面上昇による圧力、陸側からは道路や住宅などの都市開発による圧力がかかり、砂浜が両側から締め付けられるように狭くなっていく現象です。
砂浜は本来、波や風によって砂が行き来しながら形を変える、非常に動的な自然環境です。
ところが、陸側をコンクリートなどで固めてしまうと、砂浜が後退する余地そのものがなくなります。
つまり、自然に逃げる場所がなくなってしまうのです。
砂浜を守るための「養浜」
では、砂浜が減っていくのを黙って見ているしかないのでしょうか。
そうではありません。
各地で行われている対策の一つが「養浜(ようひん)」です。
これは、人工的に砂を海岸へ補給して砂浜を維持する取り組みです。
例えば和歌山県の白良浜では、砂の供給量が減少して砂浜が痩せてきたため、1989年から養浜事業が行われました。
国内だけでなく海外からも砂を探し、最終的にはオーストラリア・パースの砂が白良浜と相性が良いことが分かり、12年間で約14万トンもの砂が補給されました。
現在も突堤やネットを設置するなど、砂浜を守る取り組みが続けられています。
私たちにもできること
砂浜を守るというと、大規模な工事や行政の仕事のように感じます。
しかし、私たちにもできることがあります。
その一つが、海岸にゴミを残さないことです。
砂浜に放置されたゴミには砂が付着します。
そのゴミを回収するとき、付着した砂まで一緒に持ち去られてしまうことがあります。
一人ひとりがゴミを持ち帰る。
それだけでも、長い目で見れば砂浜を守ることにつながります。
まとめ
砂浜は、単なる「夏のレジャースポット」ではありません。
そこには、山から川、川から海へと砂が運ばれる自然の循環があり、生態系を支え、さらに波の力を弱めて私たちの生活を守る役割があります。
しかし今、その循環がさまざまな理由で崩れつつあります。
そして2100年には、日本の砂浜の6割以上が失われる可能性も指摘されています。
不動産の仕事をしていると、土地や建物だけでなく、「その場所が将来どう変わっていくのか」を考える機会があります。
海の近くで暮らすということも、単に眺めが良いというだけではありません。
海岸線がどう変化するのか、災害リスクはどうなのか、自然環境はどう維持されていくのか。
これからの住まいや地域を考えるうえで、こうした視点もますます重要になるのではないでしょうか。
今年の夏、海へ出かけた際には、いつもより少しだけ砂浜を眺めてみてください。
そこには、何万年、何百万年という自然の営みと、これから私たちが守っていかなければならない未来が詰まっています。
◻︎◻︎WIRED.jp 地球上の砂浜の半分が“消失”する原因は、海面上昇だけではない
https://wired.jp/article/global-beach-erosion-climate-urbanization-coastal-squeeze/
マイ大阪ガス 白良浜の白い砂は、どこからやってきた?
https://services.osakagas.co.jp/portalc/contents-2/pc/tantei/1270841_38851.html
【本日の一曲】
Horace Andy – Tiny Desk (Home) Concert
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