一次避難の「その後」を考える
災害時に本当に必要なのは、二段階目の避難かもしれない
熊本県のイオンモール熊本で発生した爆発事故について、地震発生当時の状況が少しずつ明らかになってきました。
不動産・建築に関わる仕事をしている身としては、まず、なぜ地震後にあれほどの爆発が起きたのか、建物や設備にどのようなことが起きていたのかという部分が気になります。
一方で、今回の事故について報道を見ていて、もう一つ非常に考えさせられたことがあります。
それは、
「一次避難した後、どうするのか?」
という問題です。
今回のケースでは逃げ遅れた方はおらず、お客様・従業員全員が一度避難完了している事は、さすがイオンという印象を受けました。
地震が起きたら建物の外へ避難する。
これは誰もがイメージする基本的な防災行動です。
多くの方が地震発生後に館外へ避難しました。報道では、イオン側のマニュアルにも「一旦避難した者は館内に入らない」という趣旨の規定があったとされています。
ところが、その後、実際には館内へ戻った方がいました。
そして、その後に爆発が発生しました。
もちろん、ここには「なぜ戻ったのか」という事情があります。
「車のカギ」を取りに戻るという現実
報道の中で特に印象に残ったのが、ある従業員の「車のカギを取りに戻った」という話でした。
都市部に住んでいる方からすると、「避難したのなら、そのまま帰ればいいのでは?」と思うかもしれません。
しかし、香川県など車社会の地域に住んでいると、この感覚は少し違います。
ショッピングモールなどへ車で通勤している人は非常に多く、駅から徒歩圏内とは限らない場所も珍しくありません。
車で40分かけて通勤している人なら、車のカギを館内に置いたまま避難した場合、「歩いて帰る」という選択肢は現実的ではないでしょう。
「家に帰るために車が必要」
これは、災害時であっても非常に自然な心理だと思います。
また、別の報道では、猛暑の中で館外に避難したことで、暑さから再び館内へ戻った人もいたとされています。
地震発生時は35℃前後の猛暑。
冷房の効いた施設から突然屋外へ出れば、高齢者などにとっては熱中症のリスクも無視できません。
つまり、避難した人が館内へ戻る理由は、「危機意識が低かった」の一言では片付けられないのです。
貴重品、車のカギ、暑さ、帰宅手段……。
災害時には、さまざまな事情が重なります。
「避難する」だけでは終わらない
今回の出来事から私が強く感じたのは、災害時の避難には、いくつもの段階があるということです。
まずは、
①命を守るために建物から避難する。
ここまでは比較的分かりやすい。
しかし、その次に、
②避難した場所から、さらに安全な場所へ移動する。
そして場合によっては、
③自宅へ帰るのか、避難所へ移動するのか、そこで待機するのかを判断する。
という段階があります。
地震の場合、その後に津波が来る可能性もあります。
雨が降っているかもしれない。
夜間で周囲が真っ暗かもしれない。
避難した場所そのものが安全とは限らない場合もあります。
さらに、自宅が無事だとは限りません。
つまり、
「建物から出れば避難完了」ではない。
これが今回、非常に強く考えさせられた部分です。
「取りに戻らない」を前提にした備え
では、どうすればいいのでしょうか。
一つの考え方として、災害時は「貴重品や車のカギを取りに戻らない」ことを基本にする必要があると思います。
もちろん、施設側の安全確認が完了するまでは、館内への再入場を認めないことが重要です。
そのうえで、車を使わなければ帰宅できない人や、自力で帰宅することが難しい人については、建物の外で安全な場所へ誘導し、次の行動を案内する仕組みが必要になります。
「車のカギを忘れた人はどうするのか?」
「高齢者や子どもはどこで待機するのか?」
「猛暑や大雨の場合は?」
「夜になったら?」
「津波の可能性がある場合は?」
こうしたところまで考えて、初めて「避難計画」になるのではないでしょうか。
建物を扱う仕事だからこそ考えたいこと
私は大きな災害に巻き込まれた経験がありません。
実際に南海トラフ地震のような大規模災害に直面したら、きっと気が動転するでしょう。
平時なら「これは危険だから戻ってはいけない」と分かっていても、その場になれば、
「車がないと帰れない」
「家族と連絡が取れない」
「暑くてここにいられない」
「荷物を取りに行かなければ」
と考えてしまうかもしれません。
だからこそ、災害が起きてから考えるのではなく、平時にできるだけ具体的にイメージしておくことが大切なのだと思います。
今回の事故は、一次避難そのものだけではなく、
「避難した後、次にどこへ行くのか」
という二段階目の避難について、私たちに大きな課題を突きつけているように感じます。
建物から外へ出る。
その次は?
自宅へ向かう?
避難所へ行く?
その場で待つ?
さらに別の安全な場所へ移動する?
災害時には、状況によって正解が変わります。
だからこそ、「避難する」という一つの言葉だけで考えるのではなく、その後の行動までを具体的に想像しておく。
今回の事故について考えることは、建物の安全性だけでなく、私たち自身の防災行動を見直すきっかけにもなるのではないでしょうか。
◻︎◻︎日テレニュース イオンモール爆発事故「避難後は戻らない」マニュアル機能せず 「貴重品OK」と許可か 現場で混乱
https://news.ntv.co.jp/category/society/be8e5cc2248843799d9ffa5a9b5e36ba
【本日の一曲】
The Gap Band – Yearning For Your Love
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