2026 09 25

なぜ、印旛沼の水はなかなか引かないのか? 台風25号の被害から考える「土地と水」の話

先日の台風25号によって、関東地方では大きな被害が発生しました。

土砂崩れによる被害や、浸水した車両の中で亡くなられた方もいるなど、決して小さな被害ではありません。

その中でも大きく報道されたのが、千葉県の印旛沼周辺の浸水被害です。

特に印象的だったのが、

「雨がやんだのに、なぜ水がなかなか引かないの?」

ということ。

これには、印旛沼周辺ならではの地形と、水の流れの仕組みが関係していました。


印旛沼は「水が入ってくる場所」が多い

印旛沼は、北印旛沼と西印旛沼に分かれています。

周辺には高崎川や鹿島川など、印旛沼へ水が流れ込む河川が複数あります。

一方で、印旛沼から外へ水を出していくルートは限られています。

つまり、大雨が降ると、

周辺から大量の水が入ってくる
↓
印旛沼の水位が上がる
↓
周辺河川も増水する
↓
水を外へ出しにくくなる

という状況が起こりやすくなります。

実際、今回もポンプを使って水を強制的に排出する作業が行われました。

ただ、どれだけポンプを動かしても、入ってくる水の量が多ければ簡単には追いつきません。

さらに利根川など、排水先の水位が高くなると、今度は印旛沼から水を出しにくくなります。

場合によっては、逆に水が戻ってくることもあります。

水は「低いところから高いところへ」自然には流れてくれません。

そのため、ポンプなどによる排水が重要になります。


なぜ水が「引かない」のか

今回の被害を考えるうえで、もう一つ重要なのが**「湛水(たんすい)」**という状態です。

簡単に言えば、

低い場所に水がたまって、なかなか排出できない状態。

都市部の浸水では、雨がやんで下水道などの排水能力が回復すると、比較的早く水が引いていくことがあります。

ところが、地形そのものが低く、周囲の水位も高い場所では、そう簡単にはいきません。

今回の印旛沼周辺では、浸水が徐々に解消しているものの、水が引くまでにかなりの時間がかかりました。

そして、ここで非常に興味深いのが、印旛沼の歴史です。


実は、今の印旛沼よりずっと大きかった

現在の印旛沼の周辺を見ると、住宅地や農地などが広がっています。

ところが、現在の姿になるまでには、大規模な干拓・開発の歴史があります。

もともとの印旛沼は、現在よりもずっと広い水域でした。

江戸時代には利根川の流れを東へ付け替えた「利根川東遷」の影響などから、周辺では洪水がたびたび発生。

その後も治水や開発が進められ、戦後には食料増産や水害防止などを目的とした大規模な印旛沼開発事業が行われました。

その結果、現在の北印旛沼と西印旛沼に分かれた現在の姿になっています。

つまり、現在私たちが「土地」として見ている場所の中には、かつて水域だった場所もあるわけです。

今回の浸水範囲を地形と重ねて見ると、もともと印旛沼だったエリアと重なるような場所もありました。

もちろん、これだけで「昔、水だった場所だから必ず浸水する」と言うことはできません。

しかし、土地の歴史や地形を知ることが、防災を考えるうえで重要だということは感じます。


「地形を見る」は大切

家を探すとき、

「駅から近い」
「買い物が便利」
「土地が広い」
「価格が安い」

という条件はもちろん大切です。

でも、それと同じくらい、

「この土地は、どんな場所なのか?」

を見ることも大切です。

標高はどうなのか。

周辺に川や水路はあるのか。

過去に浸水したことはあるのか。

大雨が降ったとき、水はどこへ流れていくのか。

そして、自治体のハザードマップではどのように示されているのか。

土地そのものだけを見るのではなく、その土地と周辺の地形を一緒に見る。

これが、これからの家選びではますます重要になってくるのではないでしょうか。


「今まで大丈夫だった」だけでは判断できない

最近は、これまで経験したことのないような大雨が各地で発生しています。

「この地域は今まで浸水したことがない」

という経験は、一つの判断材料にはなります。

でも、それだけで「これからも大丈夫」とは言い切れません。

今回の印旛沼のように、雨の量だけではなく、地形・河川・排水先・土地の歴史など、いくつもの条件が重なって水害が起こることがあります。

不動産は、建物だけを買うものではありません。

その土地の地形も、周辺環境も、地域の歴史も含めて「暮らす場所」を選ぶこと。

だからこそ、家を購入するときには、間取りやデザインだけでなく、

「大雨が降ったとき、この土地では水はどう動くんだろう?」

と一度考えてみる。

今回の印旛沼のニュースを見て、改めてそんなことを考えました。

「土地を見る」ということは、実は「地図を見る」だけではないのかもしれません。


◻︎◻︎印旛沼水質保全協議会 印旛沼について
  https://www.insuikyo.jp/environment/gaiyou/


【本日の一曲】
Nina Simone – Mr. Bojangles

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