2026 04 05

北欧で評価される日本の手仕事──飛松灯器が照らす、暮らしの“静かな価値”

最近、とても興味深い記事を読みました。
日本の磁器照明作家・飛松弘隆氏による「飛松灯器」が、スウェーデンをはじめヨーロッパで高く評価されているという内容です。ストックホルム家具見本市やコペンハーゲンのデザインイベントをきっかけに、レストランや高級住宅、別荘などへの採用が広がっているそうです。

不動産や住宅の仕事をしていると、「空間の印象を決める最後のひと手間」がどれだけ大切かを日々感じます。
床材や壁紙、家具の配置ももちろん重要ですが、最終的にその空間の空気感を決定づけるのは、やはり“光”です。

飛松灯器の魅力は、単なる照明器具ではなく、光そのものをデザインしていることにあると感じました。


磁器がつくる、やわらかな光

飛松灯器の最大の特徴は、磁器の透光性を活かしたランプシェードです。

磁器といえば、一般的には器や花瓶を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし磁器は、非常に薄く成形すると、内部の光をやわらかく透かす性質があります。飛松氏はこの特性に着目し、10年以上にわたって素材研究と制作技術を重ねてきたそうです。

完成したシェードは、わずか2〜3ミリという薄さ。
それでいて十分な強度を持ち、点灯するとまるで和紙や乳白ガラスのように繊細な光を放ちます。

ヨーロッパの来場者が、近づいて「紙かと思ったら磁器だった」と驚くという話にも納得です。

この“柔らかい光”は、住空間において非常に大きな価値を持ちます。

明るさだけを求めるならLEDの高照度照明で十分ですが、
本当に心地よい住まいとは、単に明るいだけではなく、その光の質まで整っている空間です。


北欧で評価される理由は「美意識の共通点」

飛松灯器が北欧で受け入れられている背景には、日本と北欧の美意識の共通性があります。

北欧インテリアは、装飾を削ぎ落とし、素材感や余白を大切にする文化です。
一方、日本にも侘び寂びや陰影礼賛に象徴されるように、静けさや余白を美とする感覚があります。

近年よく聞く「Japandi(ジャパンディ)」という言葉も、まさにその融合です。
日本的な静謐さと北欧の機能美が組み合わさり、世界的なインテリアスタイルとして定着しています。

飛松灯器の磁器照明は、この文脈に非常に自然に馴染みます。

過度に主張せず、しかし空間に確かな存在感を残す。
昼間はオブジェのように静かに佇み、夜は柔らかな光で空間を包み込む。

この“二面性”が、北欧の長い夜にもよく合うのでしょう。


手仕事の価値は、これからさらに高まる

もうひとつ面白いのは、ヨーロッパで評価されている理由として「手仕事そのものの価値」が見直されている点です。

現代の欧州では、デザインと製造が分業されることが一般的で、
デザインはスウェーデン、製造は南欧やアジアという流れも珍しくありません。

そんな合理化された社会だからこそ、
日本のように作家自身が素材と向き合い、型を作り、鋳込み、焼成し、仕上げまで責任を持つ仕事に、強い価値を感じるのだと思います。

飛松灯器の多くは「排泥鋳込み」という技法で作られています。
石膏型に泥漿を流し込み、余分な泥を抜いて薄く成形する非常に繊細な方法です。

量産に向く方法ではありますが、飛松氏の作品はその中に一点ものの表情があります。

同じ型を使っても、型の傷や経年変化をあえて残し、
“型の成長”として作品に反映させているそうです。

ここに、工業製品にはない時間の積層を感じます。


不動産・住宅でも「照明」は資産価値を変える

この話は、実は不動産や住宅にもそのまま通じます。

家づくりやリノベーションのご相談で、
間取りや設備、断熱性能などの話は多く出ますが、照明計画は後回しになりがちです。

しかし実際には、照明で住まいの印象は大きく変わります。

  • 同じLDKでも、照明の高さで広さの感じ方が変わる
  • 光の色温度で木の質感が変わる
  • ペンダントの素材で空間の格が変わる
  • 玄関の灯りで家全体の印象が決まる

こうした要素は、写真映えにも直結するため、売却時や賃貸募集時の反響にも大きく影響します。

最近は「ただ新しい家」より、
世界観のある住まいが選ばれる時代です。

そう考えると、飛松灯器のような照明は単なるインテリアではなく、
住まい全体の価値を高める“空間投資”とも言えるかもしれません。


モノではなく、背景を選ぶ時代へ

個人的に最も共感したのは、JAPAN FORMが「単に売るのではなく、日本の文化的価値を正当に伝える」ことを重視しているという点です。

これは不動産でも同じです。

家はモノとして買うものではなく、
そこに流れる時間や、暮らし方、背景にある物語ごと選ぶもの。

照明もまた、ただ部屋を明るくする道具ではありません。

誰が、どんな素材で、どんな思想で作ったのか。
その背景が空間に深みを与えます。

飛松灯器が北欧で評価されているのは、
日本の繊細な手仕事が世界に通用しているというだけでなく、
“暮らしの質を整える本質的な価値”が国境を越えて共有されている証拠なのだと思います。

住まいを考えるとき、間取りや価格だけでなく、
そこにどんな光が落ちるのかまで想像してみる。

そんな視点があるだけで、家選びもリフォームも、もっと豊かなものになるはずです。


◻︎◻︎Forbes Japan 「飛松灯器」がスウェーデンで人気、欧州人を魅了する磁器の繊細光
  https://forbesjapan.com/articles/detail/92902

  飛松灯器 https://tobimatsutoki.tenoyworks.com/


【本日の一曲】
FKJ – Just Piano

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