「寝ないほうが1日を長く使える」は大間違いでした 睡眠の大切さを教えてくれる柳沢教授がラスカー賞受賞
ここ数年、メディアなどでよくお見かけするようになった、筑波大学の柳沢正史教授。
睡眠研究の第一人者として知られ、これまでにも「ブレイクスルー賞」を受賞するなど、世界的に注目されている研究者です。
そんな柳沢教授が、アメリカで最も権威のある医学賞の一つで、「米国版ノーベル賞」とも呼ばれるラスカー賞の基礎医学部門を受賞されました。
今回は、そんなニュースを見ていて、私自身の「睡眠」にまつわる恥ずかしい思い出を思い出しました(笑)。
「寝ないほうが得」だと思っていた20代
突然ですが、私は20代くらいまで、
「1日は24時間しかないんだから、寝ている時間が短いほうが得じゃない?」
と思っていました。
例えば8時間寝る人なら、起きている時間は16時間。
6時間しか寝ない人なら18時間。
だったら、2時間多く活動できるじゃないか。
仕事もできるし、遊ぶ時間も増える。
つまり、
「寝ないほうが人生を長く使える!」
……と、本気で思っていたわけです(笑)。
今考えると、とんでもない理屈です。
当時の自分に言ってやりたい。
「その2時間、何をするつもりなんだ?」と(笑)。
もちろん睡眠時間には個人差がありますし、必要な睡眠時間も年齢などによって違います。
ただ、睡眠を単純に「活動していない無駄な時間」と考えていたのは、完全に間違いでした。
柳沢教授が解明した「眠り」と「覚醒」の仕組み
柳沢教授が世界的に知られるようになった大きな研究成果が、**「オレキシン」**という神経伝達物質の発見です。
1998年、柳沢教授は、オレキシンを作れないようにしたマウスが、突然眠り込んでしまうナルコレプシーに似た症状を示すことに着目しました。
そして、オレキシンが脳の中で覚醒を維持するために重要な役割を果たしていることを明らかにしました。
同じ時期には、スタンフォード大学のエマニュエル・ミニョー教授も、犬の遺伝性ナルコレプシーについて研究し、オレキシンの受容体にたどり着いています。
こうした研究によって、私たちが「眠る」「起きている」という当たり前の現象について、そのメカニズムが少しずつ解明されていきました。
そして、この研究は新しい不眠症治療薬やナルコレプシー治療薬などにもつながっています。
普段何気なくやっている「寝る」という行為が、実はものすごく複雑な仕組みの上に成り立っているんですね。
「睡眠=何もしていない時間」ではない
私が若い頃に考えていた、
「寝ていない時間が長い=人生を長く使える」
という考え方。
今なら、むしろ逆だったのかもしれないと思います。
睡眠中も、身体や脳は何もしていないわけではありません。
一日の活動で受けた疲労を回復させたり、記憶や学習に関わったり、身体のさまざまな機能を整えたり。
つまり、
「寝ている時間」も、次の日を元気に活動するための大切な時間。
そう考えると、睡眠は「人生を削っている時間」ではなく、人生をちゃんと使うための時間なのかもしれません。
最近は仕事やスマートフォン、動画、SNSなど、睡眠時間を削ろうと思えばいくらでも削れてしまいます。
「あと1本だけ動画を見よう」
「あと10分だけSNSを見よう」
……これが積み重なって、気がつけば寝る時間が遅くなる。
私も気をつけたいところです(笑)。
「ほとんど寝ない動物」もいるけれど……
ところで、睡眠の話になると気になるのが、
「じゃあ、動物ってどのくらい寝るんだろう?」
ということ。
実は、地球上には「完全に一切眠らない」ことが確認されている動物はいないとされています。
ただ、人間からすると驚くほど睡眠時間が短い動物はいます。
例えばキリン。
1日の睡眠時間は非常に短く、短時間の睡眠を細かく繰り返すといわれています。
ゾウも睡眠時間が短い動物として知られています。
そして、イルカやクジラなどの海棲哺乳類には、さらに驚くような仕組みがあります。
なんと、**脳の左右を交互に休ませる「半球睡眠」**を行います。
片方の脳を休ませている間も、もう片方の脳を働かせることで、泳いだり呼吸したりすることができます。
「寝ているのに活動している」。
人間からすると、なんとも羨ましい能力です(笑)。
渡り鳥の中にも、飛行しながら脳の一部を休ませることができる種類が知られています。
生き物は、それぞれの環境に合わせて「休む方法」まで進化させているんですね。
睡眠を削るより、しっかり寝たほうがいい
今回の柳沢教授のラスカー賞受賞のニュース。
もちろん、世界的な研究成果そのものが素晴らしいのですが、個人的には改めて、
「睡眠って大事なんだな」
と考えるきっかけになりました。
20代の頃の私は、
「寝ないほうが1日を長く使える!」
などと考えていましたが、今なら、
「しっかり寝て、元気に活動できる時間を増やしたほうが、結果的に人生を有効に使える」
と思います。
そもそも、眠くて頭が働かなかったら、起きている時間が長くてもあまり意味がありません(笑)。
仕事でも、趣味でも、旅行でも、そして日々の暮らしでも。
元気に動ける身体と頭があってこそ楽しめるもの。
そう考えると、睡眠は「時間を失うもの」ではなく、明日の自分への投資なのかもしれません。
柳沢教授の今後の研究にも期待しながら、今日はいつもより少し早く寝ようかな……と思います。
……と言いながら、この記事を書いている時間が遅かったら説得力ゼロですね(笑)。
◻︎◻︎筑波大学 2026年アルバート・ラスカー基礎医学研究賞 国際統合睡眠医科学研究機構 柳沢 正史
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/awards/20260909210000.html
【本日の一曲】
John Carroll Kirby – Rainmaker
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