物価上昇が止まらない時代に、住宅取得はどうなるのか
― 原油高・建設資材高騰と住宅ローンの現実 ―
物価の上昇が止まりません。日用品や食品の値上げに慣れてしまいそうな日々ですが、その波は確実に住宅業界にも押し寄せています。
さらに今回、イラク情勢を背景にホルムズ海峡閉鎖となり、原油価格の上昇リスクが現実味を帯びています。ホルムズ海峡は世界の原油輸送の要衝です。ここが不安定化すれば、原油価格は上昇し、その影響はエネルギーコストを通じてあらゆる産業へ波及します。
原油高騰 → 輸送コスト増 → 製造コスト増 → 物価上昇
この流れは、もはや避けようがない構造に見えます。そして住宅は、その影響を強く受ける分野の一つです。
15カ月連続上昇の建設資材物価
建設物価調査会が3月2日に公表した2026年2月分の「建設資材物価指数」によると、建設総合の全国平均は145.2(2015年平均=100)となり、前月比0.3%上昇。これで15カ月連続の上昇です。前年同月比でも3.4%上昇しています。
建築部門は144.0、建築補修は140.9。いずれも前月比でプラス、そして15カ月連続上昇です。
特に指数を押し上げたのは以下の品目です。
- 非鉄金属(+0.23)
銅相場の上昇を背景に、電線・ケーブル類の価格が上昇。 - 石油製品・舗装材料(+0.04)
原油調達コスト増が卸売価格へ転嫁。
つまり、原油と資源価格の上昇が、すでに建設コストへじわりと浸透しているのです。
高松は全国よりも上昇幅が大きい現実
都市別データを見ると、すべての調査対象地点で前月比プラスとなっています。その中でも注目すべきは**高松(+0.5%)**です。
コンクリート用砕石などで製造コスト増を転嫁した値上げが行われ、指数を押し上げました。福岡(+0.4%)、東京(+0.4%)と比べても、高松の上昇率は高い水準です。
四国エリアは全国的に見ると地方圏に属し、所得水準は首都圏ほど高くありません。しかも賃金上昇のペースも緩やかです。
本来であれば、せめて物価上昇は全国平均より低くあってほしいところです。しかし現実は逆で、資材高騰の影響をダイレクトに受けています。
住宅取得の難易度は確実に上がっている
最近、お客様とお話していて強く感じるのは、
「住宅取得のハードルが明らかに上がっている」
ということです。
建築費は上昇。土地価格も高止まり(造成工事費アップによる)。そこに金利上昇の気配。トリプルパンチです。
一方で金融機関は、50年ローンといった長期間融資の商品を整備しています。確かに月々の返済額は抑えられます。しかし、年数が延びれば延びるほど、当然ながら利息総額は増えます。
仮に2,500万円を借り入れた場合、返済期間が35年と50年では、総返済額に大きな差が出ます。金利がわずかでも上昇すれば、その差はさらに拡大します。
(金利1%で試算しても、総返済額は約214万円増えます。)
借りられる環境は整っている。
しかし、本当に負担が軽くなっているわけではない。
むしろ、「返済期間を長くして何とか届かせる」構造になっているようにも見えます。
これは貸し手側の理論が先行している印象を受けてしまいます。
住宅業界は国内需要の大黒柱
住宅産業は、国内需要の中でも非常に大きなウエイトを占めます。
- 建設業
- 不動産業
- 住宅設備
- 家具家電
- 金融
- 保険
- 税収
住宅一棟が動くことで、数多くの産業が連鎖的に動きます。いわば経済のエンジンの一つです。
その住宅取得が難しくなればどうなるか。
着工数は減り、関連産業は縮小し、地域経済は冷え込みます。
これは決して一業界の問題ではありません。
必要なのは「借入枠拡大」ではなく「実質負担軽減」
今こそ政府に求めたいのは、単なる融資枠の拡大ではありません。
もちろん住宅ローン控除は存在します。しかし現在の物価上昇局面においては、もう一段踏み込んだ政策が必要ではないでしょうか。
例えば、
- 住宅ローン控除の拡充
- 若年層・子育て世帯への追加減税
- 金利上昇分を一部補填する制度
- 建築資材高騰に対する直接支援
など、「実質的な負担を下げる」仕組みが不可欠です。
返済期間を延ばすことは、問題の先送りに過ぎません。総返済額は増え、将来世代へ重い負担を残す可能性もあります。
今手を打たなければ、「住宅を持つ」という日本人の一般的なライフプラン自体が大きく変わってしまうかもしれません。
原油高はこれから本格化する可能性も
東京の今後の見通しでは、H型鋼、ストレートアスファルト、コンクリート型枠合板、600Vビニル絶縁電線、軽油の5品目が強含みと予測されています。
原油価格がさらに上昇すれば、これらの価格も追随する可能性は高いでしょう。
資材価格の上昇
↓
建築費の上昇
↓
販売価格の上昇
↓
購入者減少
↓
着工減少
このスパイラルは決して絵空事ではありません。
それでも住宅は「生活の基盤」
住宅は単なる商品ではありません。
生活の基盤であり、家族の時間を育む場所です。
だからこそ、経済環境に左右され過ぎる状況は健全とは言えません。
地方都市・高松のようなエリアでは、特に切実です。所得の伸びが限定的な中で、物価だけが上昇していく。この状況が続けば、持ち家取得は一部の層だけの選択肢になってしまいます。
まとめ:今が分岐点
現在の状況は、住宅市場にとって明確な分岐点です。
- 原油高の長期化リスク
- 建設資材の継続的上昇
- 地方都市の相対的な負担増
- 長期ローン依存構造
これらが同時に進行しています。
住宅業界が止まれば、地域経済も止まります。
だからこそ、今こそ本質的な支援策が必要です。
「借りられる」環境づくりではなく、
「安心して返せる」環境づくりへ。
住宅取得が夢物語にならないために。
業界の一員として、そして地域経済に関わる立場として、切実にそう願っています。
◻︎◻︎一般財団法人 建設物価調査会 建設物価 建設資材物価指数 2026年2月分
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【本日の一曲】
Tokyo No.1 Soul Set – Hey Hey Spider
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