2026 05 15

「足りている」と「届いている」は違う

デザインを変えただけ という単純な話ではない

カルビーのポテトチップスのパッケージが、カラー印刷から白黒中心へ変更されるという発表は衝撃的でしたね。

さらにカゴメのトマトケチャップも、パッケージの色数を減らす方向へ。

「え、そこまで影響出てるの?」

と思った方も多いのではないでしょうか。

しかも政府は、「ナフサは足りている」「供給は継続できる」と説明しています。

しかし実際の現場では、塗料、接着剤、シンナー、包装材、住宅設備部材など、様々なものが不足し始めている。

この

「足りている」と「届いてない」

の間には、かなり大きな温度差があるように感じます。


ナフサって何?

まず「ナフサ」という言葉、普段あまり聞きませんよね。

ナフサとは、原油を精製する過程で取り出される石油化学の基礎原料です。

いわば、「産業の血液」のような存在。

ここから、

・プラスチック
・塗料
・接着剤
・包装フィルム
・合成ゴム
・塩ビ管
・医療用チューブ

など、私たちの生活を支える様々な製品が作られています。

つまり、ナフサが不足するということは、単にガソリンだけの話ではなく、

「世の中のあらゆる製品に影響する」

ということなんです。


「原料がある」と「商品が届く」は別問題

ここが非常に重要なポイントです。

政府は「ナフサは足りている」と説明しています。

これは“全体量”として見れば、確かに間違っていないのかもしれません。

しかし、現場で起きている問題はそこではありません。

例えば住宅業界。

現場で必要なのは、

・塗料
・接着剤
・配管部材
・断熱材
・樹脂部品

などです。

つまり、「今すぐ使える完成品」が必要なんです。

ナフサそのものが存在していても、それが加工され、輸送され、各工場に届き、最終製品になるまでには長い工程があります。

例えるなら、「小麦はある」
でも「明日のパンが店頭に並ぶとは限らない」

という話に近い。

ここに、政府の説明と現場感覚のズレがあります。


サプライチェーンは“1つ足りない”だけで止まる

特に今の製造業は、非常に複雑なサプライチェーンで成り立っています。

例えばシステムキッチン。

本体は完成していても、

・接着剤が不足
・樹脂パーツが不足
・塗料が不足

このどれか1つでも欠けると、出荷できません。

住宅設備って、数千点単位の部材で構成されています。

なので、「全体の99%が揃っていても、1%欠ければ完成しない」世界なんです。

実際、私も日々業者さんと話をしていると、

「この材料が入らない」
「納期未定になった」
「突然受注停止になった」

という話をかなり耳にします。

特に住宅業界は影響が大きい印象です。


TOTO受注停止のニュースも象徴的

先日のTOTOの受注停止報道もかなり話題になりました。

「え、あのTOTOが?」と思った方も多かったはず。

もちろん原因は一つではありませんが、こうした背景には、

・部材不足
・原材料不足
・物流問題
・エネルギーコスト上昇

など、様々な問題が絡み合っています。

住宅って、一見すると木とコンクリートでできているように見えますが、実際はかなり“化学製品”に依存しています。

断熱材も、配管も、防水材も、接着剤も、塗料も。

つまりナフサ問題は、住宅業界に直結するんです。


ガソリン補助金が別の歪みを生む?

さらに難しいのが、政府のガソリン補助金。

ガソリン価格を抑えるために大規模な補助が行われています。

もちろん家計負担を抑える意味ではありがたい。

ただ、別の見方をすると、

「ガソリンを優先して生産した方が利益になる」

という構造にもなります。

結果として、石油化学原料側への供給が弱くなる可能性がある。

つまり、「ガソリン価格は抑えられた」
でも「工業製品が不足した」

という別の問題が起きる可能性もあるわけです。

これは非常に難しい問題です。


大企業には届き、中小には届かない現実

もう一つ現場で感じるのは、

「資材の偏り」

です。

限られた在庫しかない場合、当然ながら優先されるのは、

・取引量が大きい会社
・長年付き合いがある会社
・支払い能力が高い会社

になります。

すると何が起きるか。

中小企業や町工場、地域の工務店には物が回りにくくなるんです。

これは実際かなり感じています。

「大手には出ているのに、こちらには入らない」

という話も珍しくありません。

つまり、

“日本全体では足りている”

と、

“自分の会社に届く”

は全然別問題なんです。


白黒パッケージは「時代のサイン」

カルビーの白黒パッケージ。

単純な「デザイン変更かな?」という話ではなく、

背景を知ると、これはかなり象徴的な出来事に感じます。

包装インクやフィルムも石油化学製品。

つまり、

「色を減らす」

というのは、単なるデザイン変更ではなく、

“資材不足への対応”

でもあるんですね。

そう考えると、白黒になったポテトチップスの袋は、

「日本の供給網に変化が起きている」

というサインなのかもしれません。


「足りている」と「届いている」は違う

結局のところ、今回の問題で感じるのはここです。

政府はマクロで見ている。
現場はミクロで動いている。

全体量として存在していても、

・必要な日に
・必要な場所へ
・必要な規格のものが
・必要量届くか

は別問題。

現場はそこで困っています。

住宅業界も、建築業界も、製造業も、物流も。

今後しばらくは、この「供給不安定」と付き合っていくことになるのかもしれません。

ただ逆に言えば、

これまで当たり前だった
「いつでも物が届く社会」

が、実はかなり高度なバランスの上に成り立っていたことにも気付かされます。

普段何気なく使っている住宅設備や日用品も、世界中のエネルギー、物流、資源供給によって支えられている。

そう考えると、白黒になったポテトチップスの袋も、ただのデザイン変更ではなく、

「今の時代を映す鏡」

なのかもしれません。


◻︎◻︎アゴラ 政府が「ナフサは足りている」というのに、なぜポテトチップスは白黒になったのか
  https://agora-web.jp/archives/260514030917.html


【本日の一曲】
The Prodigy – Firestarter (Empirion Mix)

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