2026 06 26

なぜスポーツを見ない人にもワールドカップは面白いのか?

~オリンピックとの違いから見えてくる「熱狂」の正体~

ワールドカップが始まると、日本中の空気が少し変わります。

普段はサッカーを見ない人が「今日、日本戦だよね?」と話題にし、試合が終われば翌日は職場や学校でその話でもちきりになります。

不思議なのは、その中には「オフサイドがよく分からない」という人も少なくないこと。それでもゴールが決まれば飛び上がり、惜しい場面では思わず声を上げてしまいます。

一方で、以前は国民的イベントだったオリンピックは、昔ほどの熱狂を感じなくなったという人も増えてきました。

この違いは、一体どこから生まれるのでしょうか。


「日本代表」という誰でも乗れる船

ワールドカップ最大の魅力は、「日本代表」という存在です。

Jリーグなら応援するクラブを選ばなければなりません。

プロ野球でも、どの球団を応援するかによって見方が変わります。

しかしワールドカップでは、その必要がありません。

日本人なら自然と「日本代表」を応援する。

応援する対象を選ぶ必要がないため、スポーツに詳しくなくても、誰でもその熱狂に参加できます。

マーケティングの世界では「参加のハードルが低いこと」は非常に重要だと言われます。

ワールドカップはまさにその典型です。

知識も経験も必要ありません。

「日本だから応援する。」

それだけで十分なのです。


結末を誰も知らないドラマ

映画やドラマは脚本があります。

どんなに感動的でも、結末はすでに決まっています。

しかしスポーツには台本がありません。

次の1秒で何が起きるか、誰にも分からない。

世界最高峰の選手でも、監督でも、解説者でも、未来は予測できません。

その緊張感が人を引き込みます。

さらにサッカーは得点が少ないスポーツだからこそ、1点の価値が非常に大きい。

たった一度のゴールで試合の流れも、国中の空気も一変します。

「あの一瞬」をリアルタイムで共有することこそが、ワールドカップ最大のエンターテインメントなのです。


日本中が同じ感情になる瞬間

ゴールが決まった瞬間。

テレビの前でも、スポーツバーでも、自宅でも、スタジアムでも、日本中の何百万人もの人が同じタイミングで歓声を上げます。

現代社会では、同じ時間に同じ感情を共有する機会はほとんどありません。

SNSのおかげで世界中とつながれる時代ですが、逆に興味も価値観も細分化され、「みんなが同じものを見る」という経験は減っています。

だからこそワールドカップは特別です。

日本中が同じ一瞬を共有する。

この一体感は、スポーツそのもの以上の価値を持っています。


SNS時代は90分見なくても楽しめる

最近は観戦スタイルも大きく変わりました。

特に若い世代は、試合を90分見るよりも、TikTokやInstagram、X(旧Twitter)のハイライト動画や切り抜きで楽しむ人が増えています。

ゴールシーン。

スーパーセーブ。

選手の涙。

監督のリアクション。

その「物語の一番おいしい部分」だけを短時間で見る。

そしてSNSで感想を共有する。

スポーツ観戦そのものが、SNS文化と非常に相性の良いコンテンツへと変化しています。

つまり、今は試合を全部見なくても、十分に熱狂へ参加できる時代なのです。


オリンピックが昔ほど盛り上がらない理由

では、なぜオリンピックは以前ほど盛り上がらなくなったのでしょうか。

もちろん競技そのものは素晴らしいものばかりです。

しかし競技数が非常に多く、期間も長いため、どうしても話題が分散してしまいます。

昨日は柔道。

今日は体操。

明日は卓球。

そして翌日は陸上。

毎日主役が変わるため、日本中が同じ競技を同じ熱量で見る時間が短いのです。

さらに、競技によってルールが分かりにくいものも少なくありません。

ワールドカップのように「日本が勝ったか負けたか」というシンプルさはありません。

もちろんオリンピックにも感動はあります。

しかし、「国民全員が同じ方向を向くイベント」という意味では、ワールドカップのほうが圧倒的に強いと言えるでしょう。


人は本気の人に心を動かされる

ワールドカップでもう一つ心を打つのは、選手たちの本気です。

人生をかけた90分。

世界中が見守る舞台で、一切の言い訳ができない勝負に挑む姿。

その真剣さは画面越しでも伝わってきます。

だからサッカーの技術が分からなくても感動する。

人は「本気で挑戦している人」を見ると、自分の心まで動かされる生き物だからです。

今回も39歳の長友佑都選手がピッチに立ちました。

「頑張れ、アラフォー!」

そう思わず応援した人も多かったのではないでしょうか。

年齢を重ねても挑戦を続ける姿には、競技を超えて共感する力があります。


ワールドカップは企業にとっても世界最大級の舞台

この熱狂は、企業も見逃していません。

その代表例がアディダスとナイキです。

アディダスは長年FIFA公式パートナーとしてワールドカップを支え、「サッカーそのもの」のブランドイメージを築いてきました。

一方、ナイキはサッカーをファッションや音楽、カルチャーと融合させ、SNSや映像を通じて新しいファンを取り込もうとしています。

実際、両社はワールドカップ期間中に数千万回以上再生される映像コンテンツを公開し、世界中でブランド競争を繰り広げています。

試合はピッチで行われていますが、その裏では企業同士のマーケティングのワールドカップも開催されているのです


ワールドカップは「スポーツ」ではなく「体験」

結局、ワールドカップがこれほど多くの人を惹きつける理由は、サッカーそのものではありません。

日本代表という分かりやすさ。

リアルタイムで生まれるドラマ。

日本中が同じ瞬間を共有する一体感。

SNSで盛り上がる文化。

そして選手たちの本気。

これらすべてが重なって、「国民全員で物語を体験するイベント」になっているのです。

だから普段スポーツを見ない人でも夢中になる。

そして4年に一度、日本中が少しだけ同じ方向を向く。

それがワールドカップという、世界最大級のエンターテインメントなのかもしれません。

試合が終わったあとに結果だけを見るのもいいですが、もし時間が合うなら、ぜひリアルタイムで観戦してみてください。

ゴールが決まった瞬間、日本中と同じタイミングで思わず叫んでしまう――。

その体験こそが、ワールドカップ最大の魅力なのです。

   (ただ、私も普段はスポーツ全く見ないにわかファンですw )


◻︎◻︎FIFAワールドカップ2026
  https://www.fifa.com/ja/tournaments/mens/worldcup/canadamexicousa2026

  Forbes 「サッカーのアディダス」と「ナイキのカルチャー」、W杯で熾烈な対決 軍配はどちらに?
  https://forbesjapan.com/articles/detail/99556


【本日の一曲】
Tyler, The Creator – SAG HARBOR

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