備前❤︎日生大橋がつないだ「限界離島」の物語。岡山・日生の鹿久居島から見えた、風景と歴史の面白さ
香川から海を挟んでのお隣、岡山県の東端・日生(ひなせ)はもう少し東へ行けば兵庫県赤穂。
瀬戸内らしい穏やかな海と牡蠣の風景が広がるこのエリアです。
先日、そんな日生の沖に浮かぶ”鹿久居島(かくいしま)”を紹介した素晴らしいYouTubeを見つけて、一気に引き込まれました。
まだ日生には実際に足を運んだことはないのですが(その隣の赤穂には昨年行きました)、年齢を重ねたせいか、そして不動産業という仕事柄か、地域の歴史・産業・地形を知ったうえで街の風景を眺める時間が本当に楽しくなってきています。
ただ景色を見るだけではなく、
「なぜこの橋がここにあるのか」
「なぜこの集落だけ栄えたのか」
「この土地の人は何を生業にしてきたのか」
そんな背景を知ることで、風景が何倍にも豊かに見えてくるんですよね。
人口11人の島に、なぜ巨大な橋が?
鹿久居島は岡山県最大の島で、面積は約10平方km。
一方で人口はわずか11人。数字だけ見れば、まさに“限界離島”です。
ところがこの島、一般的な離島のイメージとは大きく違います。
なんと本土から巨大な橋でつながっているのです。
日生の駅から歩いてすぐ。
総合病院も近く、橋を渡ればすぐ島へ行ける。離島でありながら、都市部顔負けのアクセス性を持っています。
しかも橋の名前がまた面白い。
正式名称は”「備前❤︎日生大橋」”。
ハートマーク入りが正式名称という、なんとも時代を感じるネーミングです。
2015年開通、総工費は約78億円。
人口11人の島にこの規模の橋をかけたと聞くと、「なぜ?」と誰もが思います。
でも、この“なぜ”を考えながら風景を見る時間こそが最高に面白い。
鹿の島、みかんの島、そして開拓の島
鹿久居島の風景は、海と山、そしてまた山。
平地が極端に少なく、いかにも人が暮らすには厳しそうな地形です。
名前の由来も面白く、古くから鹿が多く生息する島として知られてきました。
江戸時代には藩による鹿狩りも行われたそうで、人より鹿の方が多いという表現も納得です。
戦後、この島には42世帯が入植し、本格的な開拓が始まります。
ただ、痩せた土地と鹿の食害に悩まされ、多くの作物は定着しませんでした。
そんな中で成功したのがみかん栽培。
斜面いっぱいに広がるみかん畑、農園モノレール、直売所で搾る生のみかんジュース。
想像するだけで瀬戸内らしい豊かな景色が浮かびます。
土地の条件に合わせて産業が育っていく姿は、地域の成り立ちそのもの。
不動産でも「土地には土地の使い方がある」と感じることが多いですが、井島はまさにその象徴のような島だと思いました。
橋の本当の目的は「頭島」だった
そして、この島最大の謎だった
「なぜ人口11人の島に橋が架かったのか」
その答えがとても面白い。
実は鹿久居島のさらに先に、**頭島(かしらじま)**という人口362人の島があります。
橋の本来の目的は、本土とこの頭島を結ぶこと。
その途中に鹿久居島がちょうどあったため、結果として“日本一便利な限界離島”が生まれたのです。
なるほど、と膝を打ちました。
都市計画や道路計画も同じですが、
単体で見ると不思議でも、広域で見ると合理的ということは本当によくあります。
一本の橋が、医療・物流・観光・通学・産業のすべてを変える。
インフラが地域の未来をどう変えるのか、その縮図を見ているようでした。
景色の裏にある、複雑で豊かな歴史
このエリアの魅力は、景色だけではありません。
鹿久居島には古代の大規模集落跡があり、南側には古代体験施設「マホロバ」もあるそうです。
さらに、平清盛が厳島神社建立の候補地としてこの島を検討したという伝説まで残っている。
また周辺の島々を見渡せば、
キリシタンの流刑地、ハンセン病の歴史を持つ島、参勤交代の風待ち港として栄えた島など、瀬戸内には本当に多層的な歴史が詰まっています。
瀬戸内の穏やかな海を見ていると忘れがちですが、
この海は昔から人・物・文化・信仰・時には罪人までも運んできた、巨大な交通路だったんですよね。
だからこそ、島ごとに個性が濃い。
風景は「背景」を知ると、もっと面白い
今回この鹿久居島の話を見ていて改めて感じたのは、
風景は背景を知ることで何倍も面白くなるということでした。
ただ海がきれい、橋が立派、島が静か。
それだけでも十分魅力的です。
でもその奥に、
開拓の歴史
鹿との共生
みかん産業
橋が生んだ暮らしの変化
周辺島しょの複雑な歴史
そういった物語があると、その場所は一気に立体的になります。
街も土地も、今見えている姿には必ず理由がある。
その理由を想像しながら歩く時間が、年々好きになっています。
香川の小豆島のすぐ北側の日生。
牡蠣の季節もいいですが、秋のみかんの時期に鹿久居島を歩いてみるのはかなり面白そうです。
◻︎◻︎環境省 日生 | SATOUMI STORY
https://www.env.go.jp/water/heisa/satoumi/story/hinase/
日生 フェノロジーカレンダー
https://www.env.go.jp/water/heisa/satoumi/story/assets/pdf/hinase_PhenologyCalendar.pdf
【本日の一曲】
Swing Out Sister – La La (Means I Love You)
◻︎◻︎せとうち不動産 https://setouchi-fudosan.com/◻︎◻︎