2026 07 17

中高年は筋トレ、若者は整形やタトゥー。そこに共通する「身体をコントロールしたい」という心理

最近、ふと思うことがあります。

中高年になると筋トレを始める人が増え、若い世代では美容整形やタトゥーが以前より身近な存在になっています。

一見するとまったく別の現象に見えますが、少し引いて眺めてみると、実は共通するものがあるように感じます。

それは、「自分の身体を、自分の意思で変えたい」という欲求です。


先行きが見えない時代だからこそ

今は変化のスピードが非常に速い時代です。

終身雇用が当たり前ではなくなり、物価は上がり、AIの発達によって仕事のあり方も変わり続けています。

数年先ですら予測が難しい社会の中で、自分の努力だけではどうにもならないことが増えています。

そんな時代だからこそ、人は「自分で確実にコントロールできるもの」を求めるのではないでしょうか。

その代表が、自分自身の身体です。

筋トレであれば、努力した分だけ筋肉はつきます。

美容整形であれば、理想に近い外見へ変化できます。

タトゥーであれば、自分だけの価値観やアイデンティティを身体に刻むことができます。

方法は違っても、「自分の人生のハンドルを、自分で握りたい」という思いは共通しているように感じます。


中高年の筋トレは「失われるもの」への抵抗

では、なぜ中高年になると筋トレに向かう人が増えるのでしょうか。

年齢を重ねると、筋力は落ち、代謝も低下し、体型も変化していきます。

つまり、身体は何もしなければ少しずつ衰えていきます。

筋トレは、その衰えに対する最も分かりやすい「抵抗」です。

若い頃の体力を維持したい。

健康寿命を延ばしたい。

もう一度、自信を持てる身体になりたい。

もちろん見た目もありますが、「まだ自分はやれる」という自己効力感を取り戻す意味合いも大きいように思います。

中高年にとって筋トレは、「過去の自分を取り戻す」ための自己構築なのかもしれません。


若者の整形やタトゥーは「まだ見ぬ自分」を作ること

一方、若い世代では整形やタトゥーへの心理的ハードルが以前より低くなっています。

これは単純に美意識が変わったというだけではないでしょう。

SNSの普及によって、人は常に「見られる存在」になりました。

プロフィール写真、動画、ライブ配信…。

画面の中の自分も現実の自分と同じくらい重要な時代です。

その中で、「理想の自分」を早く手に入れたいという気持ちが生まれるのは自然なことなのかもしれません。

筋トレのように何年もかけて変えるのではなく、整形によって短期間で理想に近づく。

タトゥーによって「私はこういう人間だ」というアイデンティティを可視化する。

これは、未来の自分をデザインするための選択とも言えます。


身体は「最後に残された、自分でコントロールできるもの」

人類は昔から身体に手を加えてきました。

しかし、その意味は時代によって大きく変わっています。

かつて身体は、家族や共同体のものでした。

髪型や服装、刺青には社会的な意味があり、個人の自由で変えるものではありませんでした。

しかし現代では、身体は完全に「自分のもの」です。

そして同時に、外見は就職、恋愛、SNSなど、さまざまな場面で評価される「資本」としての側面も持つようになりました。

筋トレも、美容整形も、タトゥーも、その背景には「身体は努力やお金によって変えられるもの」という価値観があります。

つまり身体は、生まれ持った宿命ではなく、自分で最適化する対象へと変化したのです。


AI時代だからこそ「身体」が価値を持つのかもしれない

AIの進化によって、知識や情報は誰でも手に入る時代になりました。

仕事も、文章も、画像も、コンピューターが作れるようになっています。

だからこそ逆に、「自分だけの身体」はますます特別な存在になっているのではないでしょうか。

筋肉は代わりに鍛えてもらえません。

痛みを伴う整形やタトゥーも、自分自身が選び、受け入れるしかありません。

時間、お金、努力、痛み。

それらを引き受けて得た身体は、AIには代替できない、自分だけの証でもあります。


外見至上主義の加速

筋トレも、美容整形も、タトゥーも、一見するとまったく違う文化や価値観のように見えます。しかし共通しているのは、どれも「外見」を変えるための行為であるということです。

SNSでは数秒で第一印象が決まり、プロフィール写真や動画がその人の評価につながる場面も少なくありません。外見は、恋愛や仕事、人間関係にまで影響を与える「資本」のような存在になりつつあります。

その結果、ルッキズム(外見至上主義)は確実に加速しています。そして私たちは、その流れの中で、自分の身体を「より良く見せるための対象」として捉える機会が増えているのではないでしょうか。

だからこそ大切なのは、筋トレや整形、タトゥーを良い・悪いで判断することではなく、「なぜ今の時代に、このような身体への投資が増えているのか」を考えてみることです。

外見を磨くことは決して悪いことではありません。しかし、外見だけが人の価値を決める社会になってしまうとすれば、それは少し息苦しい社会でもあります。外見も内面も、それぞれの価値を認め合える社会であってほしいと感じました。


【本日の一曲】
BILL STAX – First Feeling (feat. B.L.X, Cubic)

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