2026 08 02

佐賀県の「コスメティック構想」がすごい。化粧品を地方創生の産業にするという発想

「佐賀県」と「化粧品」と聞いて、最初に結びつく人はそれほど多くないかもしれません。

ところが今、佐賀県では**「コスメティック構想」**という、かなり面白い地方創生が進められています。

単に化粧品メーカーを誘致するだけではありません。

原料をつくる農業、研究開発、製造、容器、物流、大学、人材育成、さらには海外展開までを地域の中につなげ、佐賀を「アジアのコスメ拠点」にしてしまおうという構想です。


きっかけは2013年の「コスメティック構想」

佐賀県のコスメティック構想は、2013年から始まりました。

唐津市・玄海町を中心とした北部九州に、美と健康に関するコスメティック産業を集積させるとともに、佐賀県の豊かな自然を生かして、化粧品に使われる自然由来原料の供給地を目指すというものです。

なぜ佐賀なのか。

その理由の一つが地理的な条件です。

佐賀県は九州の北西部に位置し、福岡や長崎にも近く、韓国や中国などアジアとの距離も比較的近い。

つまり、国内市場だけを見るのではなく、アジアを含めた海外市場を視野に入れた産業集積を考えやすい場所なのです。


「化粧品工場」だけを誘致しているわけではない

この構想で面白いのは、単純に化粧品メーカーを呼んで終わりではないところです。

化粧品を一つの商品として考えてみると、

原料が必要

研究・分析が必要

製造する

容器をつくる

パッケージを印刷する

物流する

販売する

という、非常に多くの産業が関わっています。

佐賀県の構想では、化粧品の輸入代行、成分分析、受託製造、原料商社、容器、印刷、物流など、こうした関連産業を県内に集め、一貫したサプライチェーンを形成することを目指しています。

これは地方創生として、かなり理にかなった考え方だと思います。

一社だけを呼び込むのではなく、「その産業に必要な会社が次々と集まってくる仕組み」をつくるわけです。


佐賀の農業も「化粧品の原料」になる

さらに面白いのが、農業との連携です。

佐賀県では、県産の農林水産資源を化粧品原料として活用する研究も進めています。実際に、唐津市や玄海町の耕作放棄地で植物を栽培し、化粧品ブランド「THREE」の原料開発につなげる取り組みも行われています。

つまり、

「農業で作物を育てる」

だけではなく、

「佐賀で育った素材を化粧品の原料として付加価値の高い商品につなげる」

という発想です。

地方の農産物というと、どうしても「食品」として販売することを考えがちですが、化粧品原料という別の出口をつくることで、地域資源の価値を高めることができます。


そして佐賀大学に「コスメティックサイエンス学環」

ここで登場するのが、佐賀大学です。

2026年4月、佐賀大学には『コスメティックサイエンス学環』が開設されました。

佐賀大学によれば、日本の国公立大学で「コスメティックサイエンス」を本格的に学べる初めての教育組織です。募集人数は30人。学環は学部相当の教育組織で、卒業時には学士の学位を取得できます。

(定員30人に対し、志願倍率は前期が7.3倍、後期が25.6倍と全ての学部で断トツトップ!!)

これがまた、単純な「美容学部」ではありません。

化学、生物学を中心に、皮膚科学、薬学、工学などを学び、さらにマーケティングやデザインといった分野まで横断的に学びます。

つまり、

「化粧することを学ぶ」のではなく、「化粧品を科学し、産業として考える」

という学問なのです。


コスメは実は「かなりの理系」だった

考えてみれば、化粧品は非常に複雑な製品です。

水と油のように、本来なら混ざりにくいものを安定して配合したり、肌への安全性を確認したり、保存期間を考えたり、狙った使用感を実現したり。

一つの商品をつくるためには、化学、皮膚科学、生物学、薬学など、さまざまな知識が必要になります。

佐賀大学では、化粧品の有効性だけでなく、安全性や品質、関連法規、マーケティング、プロダクトデザインなども学ぶカリキュラムが用意されています。


地方創生として何がすごいのか

佐賀県の取り組みを見ていて面白いのは、「企業を誘致する」だけで地方創生を終わらせていないことです。

企業を呼ぶ。

原料をつくる。

研究する。

大学で人材を育てる。

新しい会社を生み出す。

そして海外へ売る。

こうした循環を地域内につくろうとしています。

実際、2013年の構想開始後、佐賀県内に立地したコスメティック関連事業者は17社、約1,000人の雇用創出につながり、化粧品生産額は2014年から2024年にかけて約2.2倍に拡大したと報じられています。

さらに2025年には佐賀県と佐賀大学が化粧品科学分野で連携協定を締結し、研究開発、人材育成、県産素材の高付加価値化などを一体的に進めています。


地方創生は「何を売るか」より「何が集まるか」

この佐賀県の事例を見ていると、地方創生についても考えさせられます。

「この地域には何があるか?」

だけではなく、

「この地域だから、どんな産業を集められるのか?」

という発想です。

佐賀の場合は、自然、農業、地理的条件、大学、行政、企業を組み合わせ、「コスメティック」という一つのテーマでつなぎました。

これによって、農業と化粧品、大学と企業、研究とビジネスがつながります。

不動産の仕事をしていても、地域に新しい産業が生まれることは非常に重要だと感じます。

企業が進出すれば働く人が増え、働く人が増えれば住宅が必要になり、店舗や交通など周辺のサービスにも影響が出ます。

つまり一つの産業政策が、まちそのものを変えていく可能性があるわけです。

佐賀県の「コスメティック構想」。

化粧品に興味がある方だけでなく、地方創生や地域産業、大学教育、農業の高付加価値化などに興味がある方にも、かなり面白い事例だと思います。

「佐賀=コスメ」というイメージが、10年後には当たり前になっているのか。

これからの展開が楽しみな地域の一つです。


◻︎◻︎SAGAn BEAUTY 佐賀県 コスメティック構想
  https://sagan-beauty.pref.saga.lg.jp/

  NEWSPICKS 【倍率26倍】国立大初、コスメ学部の人気が止まらない
  https://newspicks.com/news/17193048/body/?ref=news-summary_4212306

  ハナソネ ゴリゴリの理系です-佐賀大に新設「コスメ学環」とは?担当教授に聞く
  https://hanasone.mainichi.jp/articles/20260122/wom/00m/402/005000c


【本日の一曲】
Robert Glasper – Concert in Paris (Part 1/2), 2026 – RIP Casey Benjamin

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